>>306
他人の物を自由に処分してしまえる状態があれば、それは「法律上の支配」と
いえ、「占有」に当たる。ここは鉄板。反論する方が独自説。

銀行実務的には普通、出金には本人確認書類(権限者であることの確認書類)や
暗証番号(主にATM)が必要。なので今まで「通帳・印鑑」で省略してたけど実際
には上記書類・暗証番号がないと引き出せないので「法律上の支配」はない。

で、書籍に載ってる「正当な払戻権限」て用語がミスリードなんだと思うけど、
どうもこの「暗証番号等を本人から委託されて知っている」ことを「正当な払戻
権限」みたいに言ってるっぽいんだな。本人から権限授与されたら暗証番号聞かさ
れるし、また暗証番号聞いたんならすなわち権限授与されたんだろう、という思考。

だから「正当な払戻権限」の中身は、実は法的権限ではなく暗証番号を知っている
こと、などの自由に引き出し得る状態という事実状態なんだよ。これはまさしく
他人の物を自由に処分しうる状態で「法律上の支配」のオーソドックスな理解と一致
する。

では、本人の委託に基づかず、何かの偶然で通帳・印鑑・暗証番号等を全て入手して
しまったという教科書事例はどうなるかというと、この場合、自由に引き出せてし
しまうから「法律上の支配」があり、「占有」に当たる。
ただし本人の委託がないから委託信任関係に基づく占有ではないので横領罪は成立
しない。

通説のまともな理解はこれだろう。
違うというなら「なぜ、事実上の処分可能性とは別に法的な権限が『法律上の
支配』を基礎付けるのか」を実質的に説明してくれないと話にならない。