合格発表日からの二週間はとてもあわただしいものになった。
 僕は自分が論文式試験に合格したことに浮かれ、発表日は居酒屋やらバーやらを何軒もはしごしてつかのまの快楽に耽った。
 これがいけなかった。〇巳の口述模試の申し込みが極めてシビアな競争であることを知らず、それにすっかり乗り遅れたのだ。
 そして僕は、口述模試の選択肢が一つ減った状態でスタートすることを余儀なくされたのだ。それでもどうにか塾、〇ック、スクエ〇の口述模試に滑り込むことができた。
 僕は往々にして模試を愉しまず、気まずい沈黙や大胆な間違いを繰り返すばかりだった。
 だが同時に模試を受験してそういった不愉快な思いをしないわけにはいかないとも思っていた。
 孫子の兵法にほんの少しでも思いを致すことができれば、それはごく当然のことだった。
 敵を知ろうと努力せずして勝負に勝とうなどというのは、ふんだんに装飾されたホールケーキよりもさらに甘ったるい発想である。