いったいいつからこの厄介な戦いが始まっているのか、それは話す人間によって答えが異なりうる、きわめて難しい問いであるということができる。
 ある人はこう言う。論文式試験を受け終わった時から戦いは始まっていて、論文式の合格発表時点までに、どれだけ知識をブラッシュアップして口述再現を分析できるかで勝負が決まるのだ、と。
 またある人はこう言う。受験生はユニコーンにも劣らぬ可能性の塊であり、伸びしろや知識の吸収率は我々の比ではない、ゆえに勝負は論文の合格発表から口述本番までの二週間にある、と。
 さらに極端な人は、全ての戦いは昨年の予備試験の合格発表の時点から始まっていると主張する。いよいよ口述が近づいてくると、彼らは終末論者のごとき静謐のなかで時を過ごす。
 迫りくる災厄を前にして、自らがすべきことはすでに尽くされていると言わんばかりの穏やかな顔を浮かべ、そして戦場に赴くのである。