考えることに倦むと、僕はしょうもない皮算用にふけったりもした。
 九十五パーセントもの確率で合格できるのなら、自分がその中に入ることなんてたやすいのではないか。
 そうだとすれば、僕はもう合格したも同然なのではないか。
 合格したも同然なのであれば、もう敷金返還請求の要件事実のことなど考えるのをやめて、もっと楽しいことを考えてもよいのではないか。
 たとえば大学の恩師に合格を報告して、これまでの指導に感謝の意を示すというのはどうだろうか。ささやかな凱旋。悪くない。
 しかしそれより先に家族に報告しなければならないな。受験資格を得たのでこれで本当に司法試験受験生になれたのだと、今までよりも少し胸を張ることができるようになるかもしれない。
 そんなことを考えていた。