新幹線も東京駅も京葉線も、僕が通過することを余儀なくされるなにもかもが、書籍とプレッシャーをたんまり抱え込んだ受験生にとってやさしい場所ではなかった。
 やさしい場所であろうがそうでなかろうが、試験時刻は着実に近づいてきているのであり、僕は受験生としての義務から逃れることができなかった。
 新幹線を待つ行列のなかや車内で大島本を読み、京葉線の車内では類型別を開いていた。リュックから本を取り出す余裕がないときは、スマートフォンをつかって自作のまとめノートに目を通したりもした。
 必死だったのだ。
 そのあいだじゅう、僕はたくさんの汗をかいた。
 それが重い荷物を運んでいることによる暑さに起因するものなのか、翌日に控える地獄に対する体の拒否反応なのかは、わからずじまいだった。