AがBに土地を仮装譲渡したところ,Bが土地上に建物を築造した上,善意のCに建物を賃貸した。
Aは,Cに対して建物退去を請求できるか。


Cが94条2項の「第三者」に当たるかが問題である。
民法94条2項は,虚偽の外観を信頼した者を保護する趣旨であり,
その趣旨にかんがみ「第三者」とは,虚偽表示の当事者およびその
包括承継人以外の者で,虚偽表示に基づいて新たにその当事者から
独立した利益を有する法律関係に入ったために虚偽表示の有効・無効
につき法律上の利害関係を有するに至った者をいうと解する。

では,CはB所有土地であるかのごとき外観につき法律上の利害関係を
有するといえるか。
民法上,土地と建物は別個の物であり,地上建物の賃借人Cは土地については
事実上の利害関係を有するにとどまるから,Cは94条2項の「第三者」に当たらない
と考える。
→したがって,AはCに対して建物退去を請求できる。


〔通説〕Cは94条2項の「第三者」に当たる。
@地上建物の賃借人Cは土地利用権が否定されれば建物の利用を妨げられる
のであるから,土地について明渡義務を負うか否かということについて法律上の利害関係がある。
A建物賃借人Cは建物に土地の利用権限があるかのごとき外形を信頼して賃借しており,
そのような外形を作出した帰責性は土地の権利者Aにあるといえるから,外観法理に基礎を
置く94条2項を適用するのが妥当である。
→したがって,AはCに対して建物退去を請求できない。