>>603
【答え】
どうやってかはともかく、女性は知ってしまった。
かつて苦楽を共にした友達の死を。
少女管弦楽団の真の顔は、人身売買組織。
公演は金持ちを相手にした見世物という意味があるが、ここで金持ちの目に留まり、
大金と引き換えに養子になる事が出来ればラッキーだ。
満18歳まで残った少女の多くが、薬殺され、内臓を摘出され、
金持ちを招いたディナーパーティーで解体され、食べられるという無残な末路を辿った。
しかし助かる方法が一つだけあった。
少女の中から出産に適任で優秀で、見た目も美しい者を6人選び、
出産要員に加えるという事だ。
女性もそのうちの1人だった。

非合法的な組織である楽団は、人身売買の為に育てる少女を自給している。
出産要員36人が毎年子供を産み、楽団に供給している。
6人を産んだ女性は全ての役目から解放され、新たな6人の出産要員が供給される。
こうして産まれた少女がまた子供を産むというサイクルで、楽団の質を維持している。

しかし極悪非道なばかりの組織ではなく、女性には報酬が与えられる手筈だった。
明日にも記憶はフォーマットされ、新たな名を与えられ、自由な人生を手に入れる筈だった。
世界最大規模の福祉法人を母体とする楽団は、コネクションもあり、
女性を就職させる上場企業が幾らでもあった。
若く美しい女性の前途には、薔薇色の人生があった筈なのだが…。
だが女性は、自分だけ幸せになる事を嫌った。
考えようによっては、殺されるより残酷かも知れない。
子供達も何れ成長し、組織に殺される運命を辿るだろう。
そんな子供達を忘れて幸せになる自分を嫌った女性は、悲観の末に自殺してしまった。



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