ABC部数は、新聞の公称部数を示すデータ。
ABC部数が増えれば、それにともない広告の媒体価値も上がる。
そのために新聞社は、ABC部数を嵩上げするための裏工作を行う。
「新聞社から請求書を受け取っても支払い総額しか確認しない店主が大半です。
 わたしもその部類で経理のトリックには気づきませんでした。」
こんなふうに話すのは、東浅草販売店の元店主、近藤忠志さん
である。 2000年11月に近藤さんの販売店で配達していた
新聞の部数は、430部だった。しかし産経新聞社は、
ABC部数の嵩上げをするためか、同店に対し927部を送りつけた。
その結果、差異の497部が配達されないまま残紙(押し売りされた新聞、
「押し紙」)になっていた。当然、近藤さんは水増し部数の代金も払わな
ければならない。そこで産経新聞社は近藤さんの負担を軽減するために、
多額の奨励金(補助金)を支出した。 産経新聞社が東浅草販売店に送付した
11月度の「産経新聞明細」の欄から主要な数字をピックアップしてみよう。
新聞代合計:2,029,855円
奨励金合計:1,082,717円(控除)
本来であれば、近藤さんは新聞の卸代金として約202万円を
支払わなくてはならないが、様々な名目の奨励金が合計で
約108万円も支給されたので、実際の支払い額は、
差し引きした約95万円で済んでいる。
 新聞代金請求額の約50%にもなる額の奨励金を支給して、
販売店に「押し紙」を買い取らせ、ABC部数を嵩上げしている
のだ。他の月についても、同じ手口でABC部数が嵩上げ
されている。
広告主が知りたいのは実売部数であるが、それに影響がある
奨励金の額は、広告主など世間一般に公開されないブラックボックスとなっている。

なるほど、順調に部数を伸ばしているのに赤字ギリギリなのは
こういう実態があったからなんですね。