東洋経済などに掲載される「有名企業400社実就職率」をもって地方国立の就職率が悪いという話が出るが、
そもそもの率の設定に問題がある。
有名企業400社実就職率は以下のように算出される。
有名企業400社実就職率=有名企業400社就職者数÷(卒業生数−進学者数)
ここで国立と私立とで分母に含まれる進路別の卒業生比率を見ると以下のとおり、
https://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/030/602/35/N000/000/000/164347905891356856583.png
【学部卒業後の進路構成比】
〔国立大学〕
民間就職者40.7%、公務員就職者8.0%、教員就職者7.4%、臨床研修医5.1%、進学者32.8%、その他6.1%
〔私立大学〕
民間就職者76.9%、公務員就職者3.7%、教員就職者3.8%、臨床研修医0.9%、進学者 5.3%、その他9.3%

上図のとおり、学部卒業後、国立大学からは大学院等に進学する者の他、公務員・教員・医師への進路を取る者が私立大学に比べ相対的に多い。
そして、「有名企業400社実就職率」では分母から進学者数を除くため、進学者を除いての進路比率を計算すると以下のようになる。

【学部卒業後の進路構成比(進学者を除く)】
〔国立大学〕
民間就職者60.5%、公務員就職者11.9%、教員就職者11.0%、臨床研修医7.6%、その他9.1%
〔私立大学〕
民間就職者81.3%、公務員就職者 3.9%、教員就職者 4.0%、臨床研修医1.0%、その他9.8%

この結果、「有名企業400社実就職率」の分母において公務員+教員+臨床研修医の占める割合が
国立大学では30.5%、私立大学では8.9%となる。
公務員・教員・医師という進路選択が是か非かはともかく、民間就職でなくそちらを目指して成功しないと得れない進路ではある。
そういう成功を「有名企業400社実就職率」では成功しなかった側に置いた計算となっている。
それら他進路を分子に加えるか分母から除くかしないと、国立大学の真の評価にならない。
(本来なら弁護士や公認会計士など士業の資格を現役合格してその筋の事務所に入る者なども除かれるべきだが、残念ながら公表データはない)

なお、大学院卒については、理工系を中心に専攻に応じて企業から一本釣りされるので、有名企業志向とは価値観が異なる。