0754名無しさん名無しさん
2018/05/15(火) 12:45:49.75ID:CBVmr63O0東映動画労働組合の役員に推し出されてしまったときだった。
パクさんは副委員長、僕は書記長にされてしまった。
緊張で発気に苦しむような日々が始まった。
それでも組合事務所のプレハブ小屋に泊まり込んで、
僕はパクさんと夢中に語りあかした。
ありとあらゆることを。
中でも作品について。
僕らは仕事に満足していなかった。
もっと遠くへ、もっと深く、誇りを持てる仕事をしたかった。
何を作ればいいのか。
すみません、どうやって...。
パクさんの教養は圧倒的だった。
僕は得難い人に出会えたのだと嬉しかった。
その頃、僕は大塚康生さんの班にいる新人だった。
大塚さんに出会えたのは
パクさんと出会えたのと同じくらい幸運だった。
アニメーションの動かす面白さを教えてくれたのは大塚さんだった。
ある日大塚さんが見慣れない書類を僕に見せてくれた。
こっそりです。
ちょっと、すみません...。
それは、大塚康生が長編映画の作画監督をするについては、
演出は高畑勲で無くてはならないという会社への申入書だった。
当時、東映動画では「監督」と呼ばず「演出」と呼んでいました。
パクさんと大塚さんが組む。
光が差し込んできたような高揚感に湧き上がっていました。
そしてその日がきた。
長編漫画第10作目(「太陽の王子 ホルスの冒険」)が
大塚・高畑コンビに決定されたのだった。
ある晩、大塚さんの家に呼ばれた。
会社近くの借家の一室にパクさんも来ていた。
ちゃぶ台に大塚さんはきちんと座っていた。
パクさんは組合事務所と同じように、すぐ畳に寝転んだ。
なんと僕も寝転んでいた。
(大塚さんの)奥さんがお茶を運んでくれたとき、
僕はあわてて起きたが、パクさんはそのまま「どうも」と会釈した。