西谷は練習の合間を縫って、根尾の自宅がある岐阜へ何度も足を運び、所属するチームの監督に大阪桐蔭の育成方針を話した。

 ただ、親が医師で、学業も優秀と聞き、根尾が将来のことをどう考えているかが西谷は気になっていた。

 6月下旬頃だったか、3年になった根尾が見学に来た。練習環境や寮生活のことなどを説明しながら、西谷は「日本一を目指して一緒に頑張らないか」と言った後、こう告げた。

 「もし、医者を目指すのなら、今日でお別れにしよう。うちの練習は厳しいし、それだけの勉強時間を取るのは難しいと思う」

 周囲からは進学先として関東の有名高の名前も聞こえ、西谷はこの日が意思確認の期限と考えていた。

 すると、根尾が自分の思いを口にした。「僕はプロ野球選手になりたいです。よろしくお願いします」。後日、両親から正式な入学の意思を伝えられ、西谷は責任の重さをかみしめた。

 「スーパー中学生」とネットでも話題になった根尾の入学後、大阪桐蔭は4度甲子園に出場し、うち3度優勝している。