授業そのものだった西谷氏の講義
合宿初日は座学。国際大会プロジェクトチームのメンバーでもある西谷浩一氏(大阪桐蔭監督)と渡辺元智氏(前横浜監督)が日本代表に求められるものをテーマに講義をした。
中でも2013年、15年のワールドカップで代表チームを指揮し、2大会連続準優勝だった西谷氏の講義は授業そのもの。その一端を紹介したい。

まず、先のセンバツで優勝した東邦のエース・石川昂弥にはこう語りかけた。
「石川くん、優勝おめでとうございます。どうですか? 体は今、疲れていますか?」
その問いかけに、「ありがとうございます。(体は)そんなことないです」と即答した石川。西谷氏はそれを聞いてこう話しかけた。
「そんなことないなと思うものですが、体はやっぱり疲れていると思決勝までいくとかなり疲れると思います。特に投手ですし。これが夏の大会でしたら、もっと暑い中での戦いになります。
決勝までいくとかなり疲れると思います。その後すぐに代表の招集です。そこでチームを作ってやっていく。
スケジュールがタイトな中で、世界一に備えるということは至難の業です。ただ、JAPANに選ばれた20名の選手はそれができるメンバーだと思っています」

「気持ちの部分でどれだけ上げられるか」
次に指名したのは石川と智弁和歌山の主将・黒川史陽だった。

西谷氏:石川くんの夏の目標は何ですか?
石川:甲子園で優勝することです。
西谷氏:甲子園で優勝、春夏連覇ですね。それを目標にやられていると思います。黒川くんの夏の目標は何ですか?
黒川:5季連続で甲子園に出場して、そして夏、日本一になることです。
夏の甲子園、そして日本一という高校球児にとっては当然ともいえる目標を聞いた西谷氏はこう続けた。
「今日からは胸の中に、世界一になるということ。その目標をここに来た限りは、全員に持ってもらいたい。なぜなら、夏の甲子園決勝が終わったと考えてみてください
優勝して喜んで、他の選手たちはゆっくりする、喜びに浸っている時間があると思います。
特に3年生はホッとする、3年間頑張ってきて良かったと言える時だと思います。でも代表の選手はすぐに集まり、新しいチーム作りに入ります。
体も気持ちも、もう一度(大会へ向けて)上げていかないといけない。今日から、自分は侍ジャパンのユニホームを着て、
世界一になるんだということを心に持ってもらいたい。その気持ちを作るのが、この3日間の目的の一つ。
体の部分はもちろんですが、気持ちの部分をどれだけ上げていけるかが大事。まずは日本一の向こうに世界一があるんだということを考えてもらいたいと思います」

日本一という目標の向こうにある世界一の目標。これを代表候補選手に植え付けることが、この時期に集められた目的の一つでもある。