どんどんどんどんお金が減って
どんどんどんどんお城が小さくなって
もう王様に何かを言いに来る人はいなくなってしまいました。

何日も何年も経って
王様がお腹をすかせていると
男の子がパンをくれました

王様は「ありがとう」とお礼を言いながらパンを食べました。
でも王様はその男の子を知らなかったので名前を聞きました。

すると、

「僕には名前がないんです」

王様は男の子に王様の名前をあげました。

男の子は聞きました。

「王様は名前いらないの?」

王様は言いました。

「王様は『王様』だから良いんだよ」
男の子は言いました。

「お金も無くてお城もないなんて王様じゃないよ」

王様はにっこり笑って答えました。

「王様はみんながいるから王様なんだよ」

男の子は王様のことが大好きになりました。

王様は最後まで立派で優しいみんなの王様だったのです。
そんな王様をみんな大好きだから
王様がいなくなった後もみんな、名前の無い王様のことを忘れませんでした。