◆不要な官制事業が国民生活を地獄へ導く 第二地獄 [転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
税金を使って行われる官制事業は、所詮、他人の金であるため、
事業内容、結果についてもおざなりになりがちで、浪費による
借金地獄へ導かれてしまう。
ギリシャの混乱、苦境は他人事ではないのである。 ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 1
カジノ合法化に関する100の質問 2015年07月25日 09:54
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8905129.html
本エントリは、国立競技場建て替えに関連するシリーズ投稿の続きです。先のエントリを未読の
方はリンク先を参照。
その1:「誰かさん」の面子の為に使われるtoto収益
その2:「国立競技場」なる複合観光施設開発の失敗について
その3:国立競技場問題:可動屋根は「採算が合う」は本当か?
その4:国立競技場問題: totoくじ収益の「目的外」利用
その5:新国立:必要なのは「デザイン」ではなく「機能」の見直し
その6:新国立問題:森喜朗氏のヒールっぷりには感動すら覚える
さて、安倍政権が建て替え計画の白紙撤回を行ったことで、これまで延々と論じて来た国立競技場
問題は新たな局面を迎えました。安倍政権は、本問題の原因究明を行う第三者委員会の設置を予定
しており、今後、様々な論議が行われるものと思われます。この原因究明は、主に土木、建築、
開発など様々な観点で行われるものと思いますが、実は賭博研究者たる私の目には別の切り口からの
本問題の「原因」が見えています。
1. 論旨
土木、建築、開発など様々な目線で既に原因分析が始まっている国立競技場問題ではありますが、
実は本問題は2013年に行われた「独立行政法人日本スポーツ振興センター法」の改正と、それ連なる
スポーツ振興券(通称:totoくじ)収益めぐる利権獲得競争に起因するものです。以下では、なぜ
このような問題が起こったのか、その背景について何回かにエントリを分けながら、順を追って
解説をしてゆきたいと思います。 ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 2
2. 独立行政法人日本スポーツ振興センターとは
今回の国立競技場建て替え問題によって、急に全国区にその名が知れ渡ることとなった「日本スポーツ
振興センター(通称: JSC)」、本団体は国立競技場の管理運営を行っている文科省所管の独立行政法人
であり、その業務の内容は国立競技場に留まりません。JSCの主な業務の内容を整理すると、以下の
ように大きく4つに分類されます。
http://livedoor.blogimg.jp/takashikiso_casino/imgs/e/2/e26db5db.png
上記をご覧になってお判りの通り、国立競技場運営というのは寧ろJSCにとってはその事業の一部分
でしかありません。本独立行政法人は、その他に様々な事業を併せ持ち、年間の予算規模が1800億円
にも達する超巨大独法なのです。
3. totoくじ業務
このように多岐にわたるJSCの業務でありますが、なかでも特に際立っているのがその収入の60%以上を
生み出しているスポーツ振興投票、いわゆる「totoくじ」の販売業務であります。totoくじは、我が国の
刑法で禁止される「賭博および富くじ」にあたる行為ではありますが、1998年のスポーツ振興投票法の
成立によって公の行う特別な事業として合法化されました。JSCは、このスポーツ振興投票法第三条
によって、我が国唯一のtotoくじの施行主体(実施主体)として定められています。現在、totoくじの
売り上げは年間1100億円にも及んでおり、前出の通りJSCの事業収入の60%以上を占める中核業務
となっています。 ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 3
4. totoくじ収益とスポーツ振興助成業務
但し、この1100億円におよぶtotoくじの販売売上ですが、実は法律上、その使途が厳密に制限されて
おり、JSCが勝手にその采配を行うことはできないようになっています。totoくじの論拠法である
スポーツ振興投票法は、その第21条第1項においてその使途を以下のように定めています。
センターは、スポーツ振興投票に係る収益をもって、文部科学省令で定めるところにより、
地方公共団体又はスポーツ団体が行う次の各号に掲げる事業に要する資金の支給に充てる
ことができる。
上記のとおり、第一義的にtotoくじ収益はあくまで地方公共団体、もしくはスポーツ団体に対する
資金の支給に充てるものとなっており、その公平性および透明性を担保するためにその助成にあたって
は第三者委員会による審査が義務付けられています。
一方でJSCは、totoくじ事業以外にも国立競技場運営を含めて様々な事業を抱えているわけですが、
実はJSCがこれら己自身で行っている別事業に対してtotoくじの収益を勝手に充当することは許されて
いません。独立行政法人日本スポーツ振興センター法は、その第19条において、totoくじ売上のうち
最大15%を「totoくじ販売にかかる運営諸費」として拠出することを認めていますが、一方でJSCが
抱えるtotoくじ以外の事業に対してそれを拠出する場合には、「スポーツ振興投票の実施等に関する
法律施行規則」第11条の4の規定に基づき第三者委員会による審査が必要であるものとされています。
【参照1】
独立行政法人日本スポーツ振興センター法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO162.html ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 4
第十九条 次に掲げる業務に係る運営費の金額は、スポーツ振興投票券の発売金額に応じて
当該発売金額の百分の十五を超えない範囲内において文部科学省令で定める金額(スポーツ
振興投票券の発売金額が文部科学省令で定める金額に達しない場合にあっては、文部科学省令で
定める期間内に限り、別に文部科学省令で定める金額)を超えてはならない。
【参照2】
その他のセンター業務に関連する方針(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/toto/1294570.htm
スポーツ振興投票の実施等に関する法律施行規則(平成10年文部省令第39号。)第11条の4の
規定に基づき、センターがくじ収益をセンター事業に充てようとするとき又はスポーツ振興基金に
組み入れるようとするときは、あらかじめ審査委員会の意見を聴くものとする。
このように、スポーツ振興投票法および独立行政法人日本スポーツ振興センター法は、JSCが己の運営
する事業に対して延々とtotoくじ収益を注ぎ込み、「焼け太り」を起こすことを防止するためにtotoくじ
収益の使途に対して様々な制限を設けているのです。 ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 5
5. 独立行政法人日本スポーツ振興センター法の改正
ところが、そのようなJSCの「焼け太り」を防ぐためのルールが崩壊し、モラルハザードが発生する
こととなったのが2013年5月に行われた独立行政法人日本スポーツ振興センター法の改正です。この
法改正は、当時すでに日本開催が決定していた2019年のラグビーW杯、2020年のオリンピック開催
において国立競技場がメインスタジアムとして利用されることを念頭に置きながら、その建て替え
コストを拠出するために作成されたもの。その結果、「独立行政法人日本スポーツ振興センター法」
に以下の規定が付け加えられました。
センターは、スポーツ振興投票券の売上金額の百分の五を超えない範囲内において文部科学
大臣が財務大臣と協議して定める特定金額を、国際的な規模のスポーツの競技会の我が国への
招致又はその開催が円滑になされるようにするために行うスポーツ施設の整備等であって緊急に
行う必要があるものとして文部科学大臣が財務大臣と協議して定める特定業務に必要な費用に
充てるものとする
この規定は、JSCがそもそも最大15%として許されていたtotoくじ売上のtoto事業運営費への拠出とは
別に、さらに5%を「国際的な規模のスポーツ競技会の招致および、その円滑な開催を目的とした整備
事業」の名目で国立競技場の建て替え事業に対して拠出することを許すものです。 ★国立競技場問題の原因究明:賭博研究者の視点 6
先述のとおり、totoくじ収益というのは第一義的に地方自治体やその他のスポーツ団体に対する「助成」
に対して利用されるものであり、JSCが行うその他の事業に拠出するにあたっては第三者委員会による
審査が必要となります。ところが本法改正は、そのような第三者委員会の権限よりも更に上位にある
法律のレベルでその審査が及ばぬ状況を作り出し、JSCに対してtotoくじ売上の最大5%分の資金流用を
認めてしまった。このことにより、JSCは年間1100億円のtotoくじ売上のうち5%、およそ年間55億円分
を独自予算として獲得した恰好になります。
実は、今回の国立競技場建替え問題は、この毎年積みあがってゆく55億円の「使い道」をめぐる関係
各所の利益争奪戦の末に発生したものとも言えるのです。本投稿は次エントリに続きます。
カジノ合法化に関する100の質問 2015年07月25日 09:54
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8905129.html ★毎年55億円の流用で「焼け太る」国立競技場計画 1
カジノ合法化に関する100の質問 2015年07月27日 10:17
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8908869.html
本エントリは、国立競技場建て替えに関連するシリーズ投稿の続きです。先のエントリを未読の
方はリンク先を参照。
さて、前回までのあらすじをまとめると、JSCは2013年の独立行政法人日本スポーツ振興センター法の
改正により、毎年のtoto収益の5%、およそ55億円相当の独自予算を獲得しました。この予算は、
「国際的な規模のスポーツ競技会の招致および、その円滑な開催を目的とした整備事業」の名目で
作られた特別勘定であり、totoくじ収益の流用に本来的には必要されている第三者委員会による
審査権限が及ばない、一種の「聖域」となりました。これをザックリと図解すると、以下のような
形になります。
toto売上の使途(注:あくまで略式)
http://livedoor.blogimg.jp/takashikiso_casino/imgs/5/5/55b9d07c.png
(出所:各種資料を元に筆者が独自作成)
6. 年間55億円をめぐる「焼け太り」
2013年の日本スポーツ振興センター法の改正によって、特定業務勘定を獲得したJSC。この資金は
「国立競技場の建替えの為」という名目さえ立てば、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律施行
規則」によって本来は必要とされている第三者委員会による収益流用の審査が及ばないものです。
だとすると、JSCとしては「国立競技場建て替え」計画になるだけ沢山の事業を突っ込んだ方が
「お得」となるわけで、ここに毎年55億円のtoto収益流用をめぐるJSCの「焼け太り」が始まります。
ここで改めて先日計画が白紙になる前に公表されていた新国立競技場の施設内容を見てみましょう。
89室の個室を含む巨大なVIPエリア、VIP専用のメディカルルーム、会員用ラウンジ、VIP用
レストランとキッチン、スポーツ博物館、スポーツ体験エリア、スポーツ図書館、多目的ホール、
会議室、フィットネスジム、一般用の物販エリア、一般用の飲食エリア 等々 ★毎年55億円の流用で「焼け太る」国立競技場計画 2
このうちVIPエリアに関しては、その規模が巨大すぎるという批判はあれど少なくともスポーツ観戦の
為に作られるものですからそれを考慮から除外するとしても「スポーツ博物館、スポーツ体験エリア、
スポーツ図書館、多目的ホール、会議室、フィットネスジム」などは、独立行政法人日本スポーツ
振興センター法が本特別勘定を作るにあたって定めた「国際的な規模のスポーツ競技会の招致および、
その円滑な開催を目的とした整備事業」とは凡そ関係のない、JSCの独自事業です。また、一般的に
「コスト高の元凶」と説明されてきた二本のキールアーチを含む可動式の天井構造ですが、これも
競技場を全天候型の音楽アリーナ施設として転用する為に設置されるもの。これもまた、五輪誘致には
全く関係ないものとなります。
さらに言えば、これは一般には認知されていない事ですが、実はJSCはこの国立競技場の本体事業とは
別に、「周辺事業」としてJSC自体の本部ビルの移転費用を計上しています(参照)。このJSCの
新本部ビルは、国立競技場に隣接する用地に地上17階地下2階で建設される予定で、JSCの本部は
元より全1250席の劇場や220室のホテルなども入居する予定となっています。この本部ビルの建て替え
費用は、昨年示された文科省に纏わる周辺事業予算として約170億円として見積もられています。
【参照】 新国立の“戦犯”がこっそり温存 JSCに165億円ビル新築計画
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162064/2
「ビル新築は旧国立の建て直しとワンセットで決まった“五輪便乗”計画です。旧国立に隣接
していた旧JSC本部ビルは築20年しか経っておらず、新たな巨大ビルへの移転は必要なかった
はず。しかも同一敷地内に建設するのに、JSCはビル事業の勘定項目を新国立から切り離し、
予算を計上。2520億円まで膨らんだ新国立の総工費とは別立てにして、国民の目をそらして
きました。今年6月に入札を終え、すでにゼネコンの『安藤ハザマ』と建設契約を結んでいます」
(文科省事情通) ★毎年55億円の流用で「焼け太る」国立競技場計画 3
以前の投稿で、私は今回の新国立競技場問題を
「文科省傘下の独立行政法人である日本スポーツ振興センター(JSC)がオリンピックにかこつけて
複合観光施設の開発計画を企てたものの、開発に入る以前に様々な問題が露呈しましたというのが本質」
であると称しました。こうやって計画を改めてみると、今回の新国立競技場の建て替えは、私が専門
とする統合型リゾート(IR)と比べても施設構成的にも、予算規模的にも何ら遜色のない巨大な複合
観光施設開発となっている事が判ります。そして、繰り返しになりますが、ここに毎年のtoto収益の
中から5%相当分が投入されてゆくワケです。
7. 各利害関係者の「権益要求」機関となった有識者会議
このような複合観光施設開発は、いかに巨大な独立行政法人であるJSCといえども単独で描ける事業
ではありません。その周辺には様々な利害関係者が存在しているワケで、その中心的な役割を果たし
たのが「国立競技場将来構想有識者会議」と名付けられ、JSC内に設置された会議体です。この有識者
会議は、国立競技場の建替えが決定した2011年に発足したものであり、その最新メンバーは以下の
通りです。
安西 祐一郎(独立行政法人日本学術振興会理事長)
安藤 忠雄(建築家)
小倉 純二(公益 財団法人日本サッカー協会 名誉会長)
佐藤 禎一(元日本国政府ユネスコ代表部特命全権大使)
鈴木 秀典(公益財団法人日本アンチ・ドーピグ機構会長)
竹田 恆和(公益財団法人日本オリンピック委員会長)
張 富士夫(公益財団法人日本体育協会長)
都倉 俊一(一般社団法人日本音楽著作権協会長)
鳥原 光憲(公益財団法人日本障害者スポーツ協会長)
馳 浩(スポーツ議員連盟 事務局長)
舛添 要一(東京都知事)
森 喜朗(公益財団法人 東京オリンピック・パラ競技大会組織委員長) ★毎年55億円の流用で「焼け太る」国立競技場計画 4
横川 浩(公益財団法人日本陸上競技連盟会長)
笠 浩史(2020年東京オリンピック・パラ大会推進議員連盟幹事長)
(出所:JSC発表資料による)
本計画は、第一義的に競技場の建替え計画ですのでそこにスポーツ系の団体の代表者が入るのは正当
だとしても、例えば日本学術振興会、ユネスコ、音楽著作権協会(JASRAC)と非常に違和感のある
面子がかなり幅広く存在しています。そして、上記に共通するのはすべてが文部科学省所管の各業界
団体であるということです。この方々の会議の内容は、先日行われたばかりの第六回会合にその
様子が垣間見えます。以下、毎日新聞より転載。
新国立競技場:突出した総工費 有識者会議「縮小」に反発
http://mainichi.jp/sports/news/20150708k0000m050098000c.html
2520億円を導くためJSCと文部科学省は、開閉式屋根(遮音装置)設置を20年大会後に
先送りし、常設8万席のうち1万5000席を仮設に変更してコストダウンを図った。ところが
7日の会議で委員は、この「計画縮小」に反発した。
作曲家で日本音楽著作権協会の都倉俊一会長は「屋根がマスト(必須)。天候に左右され長期的な
契約はできない」と述べた。五輪後にコンサート会場として活用する構想を踏まえ、遮音装置の
先送りに不満をあらわにして早期設置を訴えた。
日本サッカー協会の小倉純二名誉会長はサッカーワールドカップ(W杯)招致を見据え「(8万
席の一部が)仮設では男子W杯の開催規定に反する。五輪が終わってからで結構なので常設と
することを確約いただきたい」と要望し、JSC側も「検討する」と応じた。 ★毎年55億円の流用で「焼け太る」国立競技場計画 5
上記第六回有識者会議は、当初予算の二倍となる2500億円にまで費用が膨らむことが判明し、国民から
既に大きな非難が向けられていた中で開催されていたもの。そのような状況の中で開催された会議で
あるにも関わらず、本有識者会議は施設の縮小に反発し、「屋根がマスト(必須)」「(客席は)
常設とすることを確約いただきたい」などと要求を突き付けている様が見てとれます。
要は、この「国立競技場将来構想有識者会議」と名付けられた会議体は、文科省所管の各団体の権益
要求を調整する機関として設置されたもの。そして「国立競技場建て替え」の名目で計画を大きく
作れば作るほど「お得」になるJSCが、このような会議体を一種の「後ろ盾」としながら、新国立競技場
の建替え計画はどんどんと肥大し、あのような複合観光施設開発にまで膨れ上がったということです。
突き詰めれば、今回の国立競技場問題は2013年の法改正で生まれたtoto収益から毎年生まれる55億円の
「分け前」を巡る、各関係者の権益獲得競争の結果として起こったものであると言い換える事もできる
のです。
カジノ合法化に関する100の質問 2015年07月27日 10:17
日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8908869.html
/// 違法な存在の特殊法人 11 //////////
石井 紘基 (著) PHP研究所 2002年1月出版 価格:¥1,785
「日本が自滅する日―官制経済体制が国民のお金を食い尽くす」より
・・・・・
第二節 特殊法人は法的には幽霊だ
民間経済の上に君臨する特殊法人
・・・・・
子会社、孫会社がどんどん増える
特殊法人(や認可法人)はどんどん子会社(公益法人も含む)、孫会社などを作る。
株式持ち合いの関連企業を含めるとファミリー企業は約二〇〇〇社にのぼる。
その役職員数は本体を除いて少なくとも一〇〇万人と推計される。本体と合わせると
一五〇万人である。政府が大半の株を保有している旧特殊法人であるJRやJT
(日本たばこ産業)などを含めると、関連企業数はさらに一〇〇〇社以上増え、
就業者数も数十万人増加する。
特殊法人のなかには民間企業をほとんど丸がかえしているものもある。しかも、
特殊法人の事業は公共事業や委託業務が多く、特殊法人によって生計を立てている
企業は非常に多い。したがって、特殊法人関係の実質就業者数は二〇〇万人は
下らないはずだ。
//////// ¥1,785で発売中 ///
/// 違法な存在の特殊法人 12 ///////
特殊法人は資金調達は思いのままだし、株主に対する事業報告書の開示義務も
なければ、経理内容も公開しない。国の財投計画の大半を受け入れて事業を展開し、
膨大な下請けを抱える特殊法人は、いうなれば企業の王様だ。製造業を除くほぼ
全産業分野に君臨している存在なのである。
特殊法人こそ、日本の資本主義経済にまとわりつく"締め殺しの木"(ファイカス)の
親分格である。ファイカスにまとわりつかれた木は、成分を栄養として吸い取られ
死んでしまう。日本経済は死に瀕しているのである。
///////// 石井紘基(著) ///
/// 違法な存在の特殊法人 13 /////////
借金のツケは国民に回される
旧総務庁は平成一一年五月、特殊法人の一部について財務調査の結果を公表した。
それによると、本州四国連絡橋公団については、道路事業だけで七二〇〇億円以上の
債務超過となっている。瀬戸内海の狭い区間に三ルートもの橋を架けているので
収支率が極めて悪い。一〇〇円の収入を得るのに二〇〇円以上の経費がかかり、
利子が利子を生んでいるのである。
石油公団も二百数十の探鉱事業のうち採算ラインにあるのが数個しかない。
石油探鉱会社に出した財投の残高一兆五〇〇〇億円のうち七七〇〇億円以上は
回収困難ということだ。
もちろん、政府がこれまで出し続けてきた税金四兆一七〇〇億円は、まるで何事も
なかったかのように掘った穴に消えてしまう(実際は、とっくに利権に消えている)。
//////// PHP研究所発行 /// 管制事業の失敗は国民の全責任で有る、長期自民党政権が作った1500兆円の返済不能の大借金は
全てそれを支持して来た国民に全責任有り、民主主義と言う衆愚政治の結果であることに目覚めよ
日本アホ国民よ。 あっつお〜暑いお〜と叫ぶ知恵遅れ、今一番心配なのは1500兆円の返済不能の大借金だ、
アホ〜日本國民の頭には何の心配も無い。
/// 違法な存在の特殊法人 14 //////////
核燃料サイクル開発機構(旧動燃)は一兆六〇〇〇億円の欠損金が累積している。
鉄建公団や空港公団の赤字も見通しは暗い、という。旧総務庁から報告のあった
九法人とも、まともなものはない。
国鉄清算事業団は平成一一年三月末日をもって解散した。そのさい残された二七兆円の
累積債務は全額が一般会計に付け替えられた。そのうち三兆円だけはたばこ税の
増税分で償却することになったが、残り二四兆円は全額国民にツケ回しされた。
いま、道路公団や都市基盤整備公団は「第二の国鉄」といわれている。それら
特殊法人の赤字のツケは、国鉄の前例にならって国民に回される可能性が強い。
特殊法人の借金残高は認可法人を含め三四四兆円であり、その金額は年々歳々
膨らみ続けている。
////////// 2002年1月出版 ///
/// 違法な存在の特殊法人 15 /////////
ここであらためて強調しておきたいのは、特殊法人の借金は国の借金以外の
何ものでもないということである。なぜならば、公庫、公団、事業団といった特殊怯人は
国会の議決で設置された国の政策遂行機関であり、国の出資金や補助金で運営
されているからである。
特殊法人には財政投融資から毎年二五兆円もの融資がなされ、その利払い金や
出資金として毎年四兆円以上の国費が注入されている。そのうえ、国鉄清算事業団を
はじめとする特殊法人の清算金や欠損金は現実に国民の負担に転嫁されている。
しかも、恐ろしいことに、特殊法人は一般企業のように倒産することがないため、
借金はどこまでも際限なく膨らみ続ける。こうした事実だけからでも、特殊法人
というものが、いかに巨大な利権装置であるかがわかる。それだけに、じつは
政と官にとって、何としても守らねばならない砦なのである。
節を改め、代表的な特殊法人について具体的な活動をみてみよう。
・・・・・
///////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 1 ///////
石井 紘基 (著) PHP研究所 2002年1月出版 価格:¥1,785
「日本が自滅する日―官制経済体制が国民のお金を食い尽くす」より
・・・・・
第三節 経済の"ブラックバス"特殊法人の姿
世界一のゼネコン――日本道路公団
高速道路建設は一般道路建設とともに巨大利権を生む公共事業の一つとして、
政官の権益に支配されてきた。高速道路の建設・管理を担うのが、旧建設省、
現国土交通省が所管する日本道路公団である。ほかに首都高速道路公団、
阪神高速道路公団、本四連絡橋公団があるが、これら四公団は財務状況、
経営実態、そして天下り構造まで、その規模の大小を別にすれば同類である。
//////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 2 ////////
日本道路公団はその資本、資産、売上げ等、どこから見ても民間土木企業大手の
一〇倍を超える超ゼネコンである。公団の新規高速道路建設は、主に民間のゼネコンに
発注されるから、その意味からも道路公団はゼネコンの上に君臨する超ゼネコンである。
国の道路建設計画としては一万四〇〇〇キロメートルの「高規格道路」があるが、
そのうち一万一五二〇キロメートルは日本道路公団による高速道路(予定路線)である。
そして、そのうち六六〇〇キロメートルはすでに完成し運用されている道路で、
九〇六四キロメートルまでは施工命令が出ている。
///////// 2002年1月出版 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 3 //////////
つまり、二四六四キロメートルを建設中というわけだ。ちなみにこの中には、
首都高速や阪神高速、本四連絡橋、アクアライン、その他都道府県の道路公社が
建設する高速道路は含まれていない。
旧建設省は当初、高速道路は完成後三〇年で償還して公団から国に引き渡し、
料金も無料になると説明していた。しかし、その後、総延長距離をどんどん延ばし、
通行料も再三値上げし、償還期間も平成七年六月に四〇年に延ばし、平成一一年
四月には四五年に延ばした。道路審議会は高速道路の耐用年数を五〇年と見ているから、
これでは永久にタダになることはない。というよりも実際には、このまま行けば料金は
もっと上がり、通行量は減り、破綻してしまうのである。
///////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 4 /////////
日本道路公団の事業規模は予算べースで年間五兆五二六七億円である
(平成一一年度)。内訳をいえば、支出面では、建設費などに二兆一一六〇億円を
使うほか、借入金(元本)返済のために二兆二六二〇億円、利子支払いのために
一兆三七〇億円の合計三兆二九九〇億円を元利返済に使っている。これに対して
収入は、料金収入が二兆二一四三億円しかないから、財投などから二兆九四八三億を
新たに借り入れ、政府から三六四一億円の資本金・補助金を受け入れて、辻褄を
合わせている。こんな財務状況なのに道路公団は道路を造り続けているのだ。
積もり積もった日本道路公団の借金残高は平成一三年度末で二七兆円に達し、
しかも毎年約九〇〇〇億円ずつ増え続けている。利息だけで毎日三〇億円が
排ガスのように消えている。
//// 官制経済体制が国民のお金を食い尽くす ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 5 //////////
子会社は儲かり、公団は大赤字
「親」の日本道路公団本体は、先に示したように莫大な借金を抱えている。一方で、
「子」が潤う。公団は後に述べるような様々な関連事業を、事実上の天下り会社である
旧(財)道路施設協会に仕切らせている。その施設協会から公団への年間納付額は、
占用料としての六六億円(平成一一年度)だけである。これでさえ、私の国会での
追及を受けて平成一〇年から値上げしたものだ。
道路公団が濡れ手に粟で儲かる事業をすべて回している「ファミリー企業」の実態を
みれば「官業は栄えて、国民が貧しさにあえぐ」という利権列島の実体が明らかになる。
//////// ¥1,785で発売中 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 6 ////////
道路施設協会は、そもそも高速道路のサービスエリアやパーキングエリアの「占用許可」を
受けるために公団、旧建設省、政界筋が示し合わせて設立したものであった。
昭和四〇年五月、旧建設省は一片の道路局長通達を以ってこの巨大利権構想を実行した。
この通達によって道路施設協会は、レストランや売店、ガソリンスタンドなどのテナント料を
横取りして急成長を果たすとともに、一気に多数のファミリー企業を発足させ、不動産業、
道路の改修メンテナンス、パトロール、料金収受、道路交通情報などを独占的に事業展開
する巨大企業にのし上がった。これらの企業の間では随意契約や丸投げが常態化している。
つまり、競争相手のない、しかも、ほとんど税金を払わない、財団法人の営利事業という、
普通の国には夢想だにできない利権システムができ上がったのである。
///////// 石井紘基(著) ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 7 ///////
協会や子会社の「公団一家」が食っている不当利得は巨大だ。直接出資の子会社
六七社(平成九年度現在)の平成八年度の総収入は六八〇〇億円。また、施設協会が
サービスエリアなどで運営を委託しているレストランなどの店舗の売上高は約三四〇〇
億円であった。しかも、これら子会社の多くは、営利を目的としてはならない公益法人
なのだから、ますます許しがたい。
道路公団とそのファミリー法人は政治家や政党へ多額の献金をしており、"政治家の
サイフ"と呼ばれている。
////////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 8 /////////
私は国会で道路公団の数々の問題とともに旧(財)道路施設協会の不当性を追及
してきたが、平成九年二月二四日の衆議院予算委員会では当時の亀井静香建設大臣に
対し「道路施設協会は天下りによる営利事業団体であるから廃止せよ」と迫った。
これに対して、亀井大臣は問題を認めて「見直す」と答え、道路施設協会は廃止される
こととなった。
しかし実際に旧建設省がやったのは、「(財)道路サービス機構」と「(財)ハイウェイ
交流センター」の二つに分割することだった。「競争原理を取り入れるため」というのが
その理由だが、もともと公益法人とは「不特定多数の利益のために……営利を目的と
しない」ものなのだ。そこに「競争原理」とはデタラメ以外の何ものでもない。
////////// 2002年1月出版 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 9 ////////
この分割の結果、それまでは役員は二八人で、そのうち旧建設省・道路公団からの
天下りが一三人であったものが、役員は合わせて三〇人となり、旧建設省・道路公団
からの天下りは一五人に増やされた。これが官僚天国のやり方であり、日頃、多数の
政治家に鼻薬を効かせてあるからこういうことが平気でできるのだ。
旧建設省は平成一一年度中に日本道路公団の天下り団体である、旧(財)道路施設
協会が設立した公団ファミリー企業六三社の持ち株を売却した。これは、平成六年から
八年にかけて、私が、「公益法人や特殊法人の出資(子会社設立)は、不適法だ」と
主張した結果、平成八年九月に「公益法人の出資を止めるべし」との閣議決定が
なされたことによる措置である。
///////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 10 /////////
私は、このとき、「公団のファミリー企業は、廃止・清算して、出資割合に見合う
資産を回収し、そのうえで、公益法人も解散させ、売却益を国庫に繰り入れるべきだ」
と主張した。なぜなら、特殊法人・公益法人のファミリー企業群は、とりも直さず国民の
税金と公団の随意契約による事業発注によって肥り、巨大な資産を蓄積したものだ。
しかも、道路公団は、莫大な借金を抱え、国民の負担になる。それを、単に簿価で株を
売却し、出資額だけを回収するのでは、国民の資産を二重に詐取することになるからだ。
////////// 官制経済体制が国民のお金を食い尽くす ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 11 //////////
案の定、危惧したことを旧建設省と旧(財)道路施設協会は、実行したのである。
二〇〜三〇年前に三五億円を出資して作った六三社の株を彼らは、平成一〇〜
一一年に六四億六〇〇〇万円で売却した。売却先は、取引銀行を除いてすべて
同族のファミリー企業。しかも、同一の会社の株でも譲渡先ごとに株価が異なった。
デタラメである。通常でもこうしたケースの株売却は、純資産方式で行われる。
純資産方式で行えば、平均一八五倍となる。金額にして六四七五億円である。
//////// ¥1,785で発売中 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 12 ////////
つまり、指導・監督責任を負う旧建設省は、少なくともファミリー企業のために、
六四〇〇億円以上の公的財産を勝手に放棄したことになる。ちなみに、株を引き受けた
ファミリー企業の経営者は、大多数が公団OBや旧建設省からの"渡り鳥"である。
旧建設省や旧(財)道路施設協会にしてみれば、「民間企業では株の引き受け手がない」
という。それはそうだ。天下りファミリーであるからこそ公団は仕事を出す。筆頭株主が
純然たる民間であれば、その瞬間に、ほぼ間違いなく仕事はこなくなり、会社は
立ち行かなくなる。不正は、取り繕えば取り繕うほど深みにはまる。もう一度仕切り直しをして、
あくまで廃止・清算するしかない。
//////// 石井紘基(著) ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 13 ////////
建設官僚の退職金について、私が追及して明らかになったものの中に、平成九年当時、
道路施設協会の理事長を務めていた宮繁護氏のケースがある。宮繁氏は建設省局長
から国土庁事務次官となり、道路公団副総裁、同総裁、道路施設協会理事長となった
人である。彼は次官退職時に五五一二万円、道路公団退任時に三六九〇万円、
道路施設協会退任時に三七六〇万円、現職の予定される退職金も含めると計一億
五〇〇〇万円以上の退職金を受けとり、その間に一〇億円前後の報酬や給与を
受けてきたことになる。
//////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 14 /////////
ちなみに、私の質問で明らかになったものに元日銀総裁の松下康雄氏がある。
松下氏は旧大蔵省(事務次官)から五八五六万円、日銀から三四〇五万円、
これに旧大蔵省から"天下った"旧さくら銀行の分を合わせると、退職金だけで
二億四〇〇〇万円以上となる。また日銀の三重野康・元総裁は日銀だけで
一億八二二一万円の退職金を手にした。
このように毎年少なくとも何百億円という気が遠くなるような退職金が高級官僚や
役人OBに支払われているのも、天下り先の行政企業が止めどなく広がり膨らんだ
せいなのである。
///////// 2002年1月出版 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 15 //////////
世界一のディベロッパー ―― 都市基盤整備公団
都市基盤整備公団は、戦後の昭和三〇年、都市労働力人口が急増する中で設置
された日本住宅公団から出発したものだ。住宅公団は「住宅の不足の著しい地域に
おいて、住宅に困窮する勤労者のために」低廉な住宅を供給する目的で設立された。
ところが、わが国経済が高度成長を迎え、財政投融資制度による長期大量な資金が
有利に調達できるようになる中で、旧建設省は日本住宅公団を住宅・都市整備公団に
改組した。既得権となった住宅、宅地開発事業の規模をさらに大きく広げるとともに、
総合都市開発、都市再開発、大規模区画整理事業(特定再開発)、公共施設整備事業、
公園事業、鉄道事業などに事業を拡大したのだ。
///////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 16 /////////
今日では資本金二四三九億円、総資産一七兆五六九〇億円という世界一の
超ディベロッパーに膨れ上がっている。とはいっても行政企業のこと、実際の資産と
いえるものは賃貸住宅の土地(時価約四兆円)ぐらいのもので、あとはとっくに
消えている。平成九年度末までに公団が供給した賃貸住宅は七七万戸、分譲住宅は
二八万戸である。またバブル期には大手民間ディベロッパーの向こうを張って
高層ビルなどを次々と手がけた。
その後、再度名称を改め、都市基盤整備公団となって民間大手を寄せつけない
独走体制に入り、ちょっとした大規模な土地買収、宅地造成が行われれば、
手がけているのはアメリカの企業か、さもなくば都市基盤整備公団、という状況を
築いている。
//////// 官制経済体制が国民のお金を食い尽くす ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 17 ////////
都市基盤整備公団の年間の予算規模は二兆九〇〇〇億円である。売上高は家賃
五〇七一億円、分譲住宅一四三八億円、分譲宅地一八〇〇億円その他合計約一兆
一六八七億円である。住宅・宅地の売上高で民間業界トップの三井不動産の資本金は
一三〇〇億円、総資産は二兆円、売上げは二五〇〇億円前後だ。日本を代表する
ディベロッパーといえども都市基盤整備公団からみれば小人のような存在であることが
わかる。
一方、平成一二年度末において公団は事業収入約一兆一七〇〇億円に対し、支出が
二兆八六六八億円で、なんと年間約一兆七〇〇〇億円も支出超過となっている。支出の
内訳は土地取得費一四七三億円、建設費六二九六億円、人件費五六二億円、
特定再開発事業費四九〇億円、さらに驚くべきは、借入金返済元金九五〇二億円、
利払い六八四九億円、となっている。
/////// ¥1,785で発売中 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 18 ////////
年間約一兆七〇〇〇億円の赤字は、財投などからの新たな借入金一兆四七二八億円と
政府の補助金などによって埋められている。補助金の内訳は、政府の出資金などが
二一三九億円、地方公共団体からの補助金が六一〇億円だ。三井不動産の社員が
一年間汗水たらして売り上げた収入より多い二七五〇億円を、公団は税金からタダで
もらっているのである。しかも、公団の仕事はといえば、ほとんどが下請けに回すだけ。
まさに"働かざる者、喰うべし"だ。
これほど税金で補っても、借金残高は鰻登りである。平成七年度に一三兆円余り
だったのが、三年後の一〇年度には一四兆五〇〇〇億円になった。ちなみに、これまで
一般会計から公団に注ぎ込まれた補助金の合計額は、四兆六〇〇億円に達している。
///////// 石井紘基(著) ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 19 ////////
住都公団は建設、設計、プランニング、補修、管理、土地取得、販売など相当の
事業を外部企業に委託しており、なかでも自ら公金を以って出資、出捐、設立した三〇社
以上の子会社、孫会社、九つの公益法人に多額の事業を発注している。平成九年度の
公団によるファミリー企業への発注高は一三〇〇億円にものぼっている。これらの
関連団体はおおむね、多数の天下りを受け入れている団体でもあり、公団そのものと
合わせて、契約、財務状況が不透明で、税金無駄遣いの温床となっている。発注先団体
による政治献金との関係も含め問題の根はじつに深いが、旧建設省、公団は経営の
秘密として隠している。許されないことだ。
//////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 20 /////////
世界一の住宅ローン会社 ―― 住宅金融公庫
住宅金融公庫は昭和二五年、戦後の厳しい住宅事情の中で、国民にせめて住む
所をと、床面積一〇〇平方メートル以下の家を建てる資金を貸す制度として発足した。
こうした事業は発展途上の時期には有効な政策だが、経済の成熟化とともに民間に
ゆだねるのが普通だ。
アメリカを始めとする多くの資本主義国では、一般金融とともに住宅融資も普通の
銀行の仕事になっている。政府はせいぜいその保証なり、税制上の措置を講じるなど
をして、あくまで「政策」の域を超えないようにしている。
///////// 2002年1月出版 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 21 //////////
しかし、政府(行政)によるビジネスは、政治家にとっても官僚にとってもうまみが
あるので、なかなかやめられない。住宅金融公庫も旧住都公団とのコンビネーションで、
どんどん縄張りを広げていった。とくに高度成長からバブル期には乗りに乗っていた。
昭和五〇年には住宅リフォームにも金を貸すようになり、昭和六〇年には高規格住宅、
昭和六二年にはセカンドハウスもOKに。さらに平成六年になると面積を二八〇平方
メートルまで広げたのである。
////////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 22 /////////
そうなると次々に新たな"理論"が必要になる。いわく、「質の高い住宅」「居住水準の向上」
「長寿社会への対応」など、もっともらしい口実がつくられた。注文住宅、ビル、マンション建設、
建売住宅、財形住宅、市街地再開発まで何でもござれ、広さ・規模無制限、融資対象は
個人でも公社でも再開発組合でも、みんないらっしゃい、という具合で住宅、ビル建設など
不動産の総元締めとなり、東京都文京区の後楽園の隣に地上一六階、地下二階の超近代的
本社ビルを持つに至った。銀行にはローン窓口や査定などをやらせて少々の手数料をくれてやる。
そして、若干のローン貸しのおこぼれを銀行にも出せるようにしてやっている。
いまや、住公(住宅金融公庫)の誇り高きキャッチフレーズは「住まいに関するあらゆる
ニーズに対応する公庫」だ。平成八年三月まで四六年間の融資実績は、戸数でじつに
一五四七万戸。これは戦後建設された全住宅の三四%に相当する。
こうしたなかで、住公の財投からの借金残高は平成一〇年度末で七八.五兆円に達した。
平成八年には六四兆円だったから二年ほどで二四兆円以上も借金が増えたのだ。
年間の運営はどうやっているかというと、収入としては、財投からの約一〇兆円の
借り入れと、過去の貸し付け分の返済受け入れが六兆円弱ある。計一六兆円である。
//////// 官制経済体制が国民のお金を食い尽くす ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 23 ///////
それに対して支出は、ローンの新規貸し付けが一一兆円強、借人金の返済が利子を
含めて八兆四〇〇〇億円の計一九.五兆円となっている。これでは経費も出なければ
一一五〇人の人件費も出ないから、国から利子補給金の名目で年に四四〇〇億円の
補助金を受けとる。
それでも毎年多額の損失金が出て、立ち行かなくなったので、平成九年末の特別
損失金六七一〇億円を政府予算に計上した。数年前にも損失金の"たまり"を税金で
処理したが、またしても"たまり"が膨らんでしまったのだ。これらの特別損失金は
向こう一一年間にわたって分割計上するから、その間の金利は一二〇〇億円くらいに
なるはずである。したがって、平成一九年の時点における特別損失はまだ実質
八〇〇〇億円あると言える。
住公は平成三、四年頃から「ゆとりローン」を大々的に売り出した。「ゆとりローン」とは、
当初五年間の返済額を安くして、六年目から返済額がハネ上がっていく制度である。
「六年後には給料も上がるから」といわれ、念願のマイホームほしさに不安を
持ちながらも口車に乗った利用者は多い。しかし、六年目がくるのは早い。その間に
子どもはできるわ、税金なども増えるわで、返済できなくなり、六カ月以上返済が
滞っている延滞件数は二万件、三四〇〇億円である。返済不能になり、公庫住宅
保証協会の代位弁済に持ち込まれたものが約一万件、一五〇〇億円を超えた。
//////// ¥1,785で発売中 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 24 ///////
住公のもう一つ大きな問題は、最近の低金利で、住公の金利よりも市中金利の方が
大幅に安くなった結果、ローン利用者の多くが他の金融機関から借り換えをして住公に
繰り上げ返済していることである。平成七年以降だけで二〇兆円も繰り上げ返済を
うけた住公は、その金を財投に返して支払い利息の負担を軽くしたいところだが、
財投は繰り上げ返済を認めない制度になっているため、住公は借りた当時の高い
金利を支払い続けなければならない。
こうした条件は他の特殊法人などでも同じで、くしくも、政府機関だけが「巨額資金の
長期運用ができる」との謳い文句のまやかしが証明されてしまった。何のことはない、
穴を開けても税金で補填してしまうことが前提の「トリック」に過ぎないのだ。
住公に投入された税金は表面だけでもすでに七兆四三〇〇億円で、毎年一〇兆円
規模で膨らみ続ける財投への借金残高は、まもなく八〇兆円に達する。もちろん、
財投から借り入れたお金の多くは、住宅ローンとして国民に貸し付けているので、
これが、そのまま不良債権になるわけではないが、住公の仕組みそのものが破綻
していることから、借金の増大はさけられない。
今後、毎年五〇〇〇〜六〇〇〇億円の税金を注ぎ込んだうえに、なおかつ、毎年
生ずる損失金が千数百億円出るだろう。私の予測ではさらに損失金がたまり、
住公が存在する限り、限りなく税による手当てが膨らむはずだ。
///////// 石井紘基(著) /// 警察による税金を使ったいやがらせ犯罪、集団ストーカー。犯行内容
盗聴、盗撮、尾行、待ち伏せ、家宅侵入、窃盗、器物破損、風評のばらまき、就職妨害、リストラ工作、
暴走族や暴走大型車両による騒音攻撃の繰り返し、住居周辺での事件のでっちあげ、音声送信の強要、
電磁波による触覚攻撃、思考盗聴、無言電話、無実の人間を犯人にでっち上げ、ヘリによる威嚇、殺人、
メディアを使ってのほのめかし。特に家宅侵入、器物破損、窃盗は犯罪そのもので、犯罪組織に人を
逮捕する権限をあたえているという、今の日本はそういった恐ろしい国になっている。
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 25 ////////
論理無茶苦茶の「財テク」集団――年金資金運用基金
年金資金運用基金は、平成一三年四月に年金福祉事業団から移行した特殊法人
である。名称は変わったが事業内容に大きな変化はない。従来、年金特別会計が
年金の積立金の全額を旧大蔵省の資金運用部に預託し、その資金運用部から
年金福祉事業団が借り入れて"財テク"を行っていた。
これでは国民の年金を利用した単なる天下りビジネスに過ぎないというので、
平成一三年に名称を変更して年金資金運用基金とし、年金資金の全額を自主運用
することになった。しかし、これまでの年金の積立金は七年間の預託にしていて
運用部から返ってこないため、この基金の事業内容は当面、従来とほとんど
変わっていない。
ただし、将来は、一五〇兆円規模の年金積立金の運用がこの基金によって
行われることになる。これまでの放漫ぶりを見れば、まことに心配なことである。
以下に現在のこの基金の放漫経営ぶりを見てみよう。
国民から集めた年金資金は従来、旧厚生省の年金特別会計に入り、そこから
資金運用部に貸し込んできた。この累計が平成一一年度末で一四四兆円である。
資金運用部は、これを財投などに投じる。年金特会はこの利息として年五〜六兆円を
資金運用部から受け取る。
ところが、一方、旧厚生省の年金資金運用基金は財投から逆に毎年五兆円程度
借りてくる、借金の累計は三六兆円である。そして、その利息が年一兆三〇〇〇億円、
元利合計で五兆円超を財投に支払っているのである。
///////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 26 ////////
つまり、旧厚生省は国民の年金の積立金を「運用」するため三.五%の利率で資金
運用部へ貸し付けたものを、そっくり三.六%の利息を払って借りてくるという、
とんでもない背信行為を働いているのである。
しかも、それを上塗りして、内職ビジネスで損を出しているのである。年金資金運用基金は
平成一二年度だけでも一兆八〇〇〇億円の欠損金を出した。従来分を合わせた
累積損金は、なんと二兆円に達しており、その穴埋めに毎年国費が七二〇億円も
注ぎ込まれているのだ。「年金の積立金を運用で増やす」とはしらじらしい。無茶苦茶だ。
要するに、国民の老後のための国民の金は次から次へとタライ回しされ利用され、
行った先々で借金をつくり、その果てしなく積もる借金の利息に、行った先々で
国民の別の金(税金)が注ぎ込まれている、という構図なのである。
それでは年金資金運用基金は、借り入れた金三六兆円を使って何をしているのか。
うち約二七兆円は信託銀行、生命保険会社など機関投資家に託して国債、外債などの
債権・株式等で運用している。金額が莫大であるので各民間金融機関は目の色を変えて、
その獲物を競っている。事業団から金融機関に落ちる受託手数料は一兆円につき
年間二〇億円ほどといわれる。
この年金財源を使って公益法人を作り、金融機関から拠出金を召し上げているのが、
(財)年金保養協会の中に平成五年に開設された「年金資金運用研究センター」である。
このセンターは、財団本来の目的とされる余暇保養の研究とは何の関係もない
「資金運用手法の開発に関する調査研究」のために、年金資金運用基金が
調査研究委託費を出す一方、都市銀行、信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社など
八七社から賛助会費を取っている。
//////// 2002年1月出版 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 27 //////////
年金資金運用基金は年金資金を株式や債券市場に投資しているが、旧厚生省が
売り買いのディーリングにまで手をのばすとは一体全体どうなっているのか。
行政マンが一日中相場に張り付いて切った張ったをやれる訳はない。おかしいことが
自らわかっていながら旧厚生省があえて設けた癒着組織といえよう。
年金資金運用基金の、もう一つの「財テク」は、住宅資金や福祉施設などに対する
融資事業と、ホテル、健康センターなどの施設事業である。資金は約一〇兆円だ。
ご多分に漏れず、住宅資金貸し付けでは返済が六カ月以上延滞している不良債権が
四〇〇億円を超しているし、小口貸し付けでも四〇億円が返済不能状態である。また、
一四七万件の住宅貸し付けも金利が高いため一一年度だけでも一兆二五〇〇億円の
ローン繰り上げ返済があった。繰り上げ返済をされても「基金」から財投への
繰り上げ返済はできない仕組みであるから莫大な逆ザヤ損失が生ずる。この分だけで
一一年度四二〇億円の利子分が国費によって穴埋めされた。
融資事業の対象としては、大規模年金保養基地「グリーンピア」がある。一カ所
一〇〇万坪の宿泊、レクリエーション施設を全国一三カ所(一一基地)に展開しよう
という(財)年金保養協会の総合ホテル経営事業である。理事長は元厚生省事務次官の
加藤威二氏。職員は一一一〇名で、事業部の一三名を除き、すべてホテルの
事務・運営管理に当たっている。
今日までの総投資額は一九三四億円にのぼり、これだけの国費を注ぎ込んでも、
ほとんどの施設が大赤字である。幾重にも天下り団体が介在したのでは
成り立たないのは当たり前だ。かといって天下り団体が介在しないのでは
厚生労働省として、わざわざ民間を押し退けてまでやる意味はない。
//////// 日本が自滅する日 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 28 ///////
「公共の宿」をなくせ――簡易保険福祉事業団など
そこで、特殊法人という存在がいかに不条理であるかの一面を、その事業分野の
一部から見ることにしよう。前項の年金資金運用基金と同様にホテル旅館業を営む
特殊法人としては、雇用・能力開発機構、簡易保険福祉事業団、環境事業団、
労働福祉事業団などがある。
雇用.能力開発機構(旧雇用促進事業団)は、国が二兆一二〇〇億円の出資金と
毎年三〇〇〇億円の補助金を出し、また、財投から五〇〇〇〜六〇〇〇億円の
借り入れを行って運営されている。職員数は四六七五人である。「機構」の主たる事業は、
全国一四の職業能力開発学校の経営と六〇カ所の職業能力開発促進センター、
四七カ所の相談センターの運営である。
この事業は、中小企業の経営環境整備として、別途位置づけられるべきであろう。
しかし、「機構」は一方で福祉施設事業として宿泊、体育館、会議・研修などの施設
二〇三三カ所を経営している。これらの事業展開を利用して、さらなる天下り団体で
ある公益法人を六団体つくり、これらに年間一二六億円(平成一二年度)の国費が
投じられている。
簡易保険福祉事業団は主に資金運用業と施設事業を行っている。資金運用業のほうは、
年金資金運用基金と同じ仕組みで、貸す利息が低くて借りる利息が高い逆ザヤで
あるから、莫大な欠損金が出る。一一年度末の累積欠損額は二七五三億円となっている。
//////// 官制経済体制が国民のお金を食い尽くす ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 29 /////////
平成一一年度で見ると、元本返済額と利払い額は、それぞれ一兆四〇〇〇億円、
二六六〇億円であった。その借金払いと事業資金のための財投からの新規借り入れが
二兆円であった。累計の財投からの借り入れ残高は一四兆円である。
事業団のもう一つの事業はホテル業である。全国に一二三軒の保養センター、温泉ホテル、
結婚式・パーティー・会合用の会館などを持って直営で経営している。これらの施設は
建設費、土地代、修理費、運営費とも国が国民の税金で出している。事業団は運営費の
一部を負担するのみである。これまで投じられた国費は出資金四二五〇億円(平成一三年度
一六五億円)と補助金五一〇〇億円(同二八八億円)となっている。それでも二億円余の
欠損金が出ている。
環境事業団は主に融資事業をやってきたが、とくに大きな事業として平成元年に
岡山県玉野市に四五億円を投じてリゾート開発に着手した。
地元の第三セクターとの間に問題が生じるなどして一三年経った今になっても完成の
見通しは立っていない。何より問題なのは、「環境」の名を冠した環境省の特殊法人が、
国立公園を一八ヘクタールも切り拓いてまで税金のムダ遣いの「財テクビジネス」を
やることだ。広大な森が今は禿げ山状態で放置されている。環境事業団の財投からの
借り入れは平成一二年度で三〇〇億円、残高は四二〇〇億円である。
労働福祉事業団も融資・助成事業の他、労災病院健康センター、リフレッシュセンター、
ホテル・旅館業などを経営している。ホテル・旅館・会館を全国に九軒持ち、土地・建物・
改修費などに補助金として国費を入れている。管理・運営は財団法人などを作って
委託する形をとっているが、毎年五〇〇〇万円(平成一一年度)ほどの赤字である。
また、事業団は、後述する雇用・能力開発機構が経営している「スパウザ小田原」の中で、
リフレッシュ健康管理センターを運営し、毎年一億七〇〇〇万円ほどの赤字を出し、
国の補助金で埋めている。労災病院には毎年二百数十億円の国費が使われているが、
これは旧厚生省が国立病院を廃止しているなかで、国の医療機関として別の形態で
存続させるべきであろう。
//////// ¥1,785で発売中 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 30 //////////
四五五億円のホテル――雇用・能カ開発機構
ここ一〇年来、国内の観光地はどこも精彩がない。私は平成一三年五月、同僚議員ら
一〇名ほどで小田原市根府川にある公共の宿を訪れ、視察がてら勉強会を持った。
その施設は「スパウザ小田原」というリゾート型超高級ホテルである。
私たちはロビーに到着するなり仰天して、口を開いたまま互いの顔を見合わせてしまった。
二万坪という広大な敷地の中に一二階建ての豪華ホテルが建ち、その中は、東京の一流ホテルにも
ない豪勢なエントランスとハイテクエレベーターや高級家具などを配置した広い空間だ。一、二階の
奥からは、これまた贅の限りをつくしたバーデ棟(ドイツ風クアハウス)、スポーツ棟が運なって
いる。スポーツ棟の二五メートルプールは屋外のもう一つのプールにも繋がっている。
セミナー室、パーティールームなどのコンベンションホール、ライブラリー、エステティック、
アスレチックジム、フィットネススタジオ、アリーナ、ジョギングコース、ゴルフ練習場、
テニスコート、アミューズメントなどの施設のほか、陶芸教室などを揃えたカルチャースペースが
あり、メンタルヘルスチェック、体力測定、医学的検査設備も完備している。
大浴場や洋風、和風の各レストランや展望カクテルラウンジにショッピングフロアなどは
もちろんのこと、屋外には外部の観光客も利用できる、しゃれたバーベキューハウスもある。
湘南の海が一望できて景色もいい。建設費は四五五億円との回答だった。
これを造って経営しているのは、先に述べた旧労働省の雇用・能力開発機構だ。みかん畑と山林だった
ところに道路を引き、高層建築を建てるには農地転用などの許可が必要だが、これも官企業だからこそ
できたことだろう。官庁はよく「民間ではできないことを(特殊法人などで)やるのだ」というが、
たしかに、民間では許可の面でも資金の面でもこんな恐ろしいことはできない。
//////// 石井紘基(著) ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 31 /////////
この超豪華ホテルの宿泊料は平均して二万円弱。私たちが泊まった翌朝のレストランは関西方面
からの婦人団体客でごった返していた。公共の宿泊施設には、このように客足のよいものも少なく
ない。なにしろ国の特殊法人や公益法人、県、市町村が権益を利用して造るから、土地代、建設費、
利子負担が要らないうえ、税金面でも優遇される。それでも毎年大幅な赤字経営で、平成一二年度は
二億二〇〇〇万円を国費で穴埋めしている。
小田原と熱海の間にこんなものができたお陰で熱海や伊東の旅館、ホテルは倒産ラッシュに拍車が
かかった、と旅館業者は怒り心頭に発している。熱海・伊東付近には他にも公共の宿が多いから
民間業者の受ける打撃は計り知れないものがある。
公共の宿は通常一泊七〇〇〇円とか、なかには五〇〇〇円台のものもある。「ありがたい」と思う
人があるかも知れない、しかしそれにはトリックがある。差額は別のところで税金や公共料金として
利息を付けてたっぷり取られていることを忘れてはいけない。公共の宿はほんとうはべらぼうに高いのだ。
私が、とくに公共の宿を問題にするのは、決して誇張ではなく、経済市場の中の余暇、観光、
レクリエーションの領域をこのように侵蝕されることで、地域経済のみならず経済全体に甚大な
影響を及ぼし、なおかつ税収を減らし、税金を無駄遣いするからに他ならない。
//////// PHP研究所発行 ///
/// 経済の"ブラックバス"特殊法人 32 /////////
公共の宿は全国に主なものだけでも三〇〇〇はある(全国旅行三団体協議会調べ)。市町村営まで
含めるとこの倍になる。全国の公的宿泊施設に投じられた国民のお金は、前記旅行三団体によると
二三兆六〇〇〇億円にのぼり、将来にわたる利息負担は莫大なものとなる。
平成一〇年に会計検査院が三七〇軒について行った調査によると、これだけでも一兆二八〇億円の
公金が使われている。これらはすべて国民の負担であるから、あるいは利用したほうが得という
考え方もあるかもしれない。
しかし私はいいたい。村民あげての"村おこし"など、観光の呼び水として役立っている施設は別
として、公的宿泊施設の利用は止めよう、公的宿泊施設はつぶそう、と。とくに家族旅行で「子どもの
ために」公的宿泊施設を利用する大人諸君には「子どもにツケを回してよいのか」と問いたいと思う。
本屋さんの旅行書のコーナーには「公共の宿」の紹介本が目立っている。こんな本を作る人も売る人も
少し立ち止まって考えてほしいものだ。
・・・・
////////// 2002年1月出版 /// 日本全国で不要のばら撒き、環境保全会、
規則の変更シバシバ、印刷代も税金
保全会の事務局もてんてこ舞いで繁雑業務、年間手当15000円
自分の田圃の周囲の草刈りは自分でやれ
草刈り日当反日で2000円、1日で3000円、協力者減退。
これに担当する職員の費用総額多大。
即辞めろ。 客の口座から巨額の金利をボッタクッタ永和信用金庫が倒産しました、至急預金を引き出して下さい、恐ろしい信用金庫なんです、 東京五輪メダリスト圓谷幸吉選手の結婚に横槍を入れて、圓谷を自殺に追い込んだ
一橋大卒の校長・吉池重明は、マジで酷い奴だな。
結婚を邪魔しただけでなく
退職後に天下り先で
重量挙げの金メダリスト三宅義信選手に
15万円もする碁盤を有無も言わせずに買わせたのか。
立場を悪用するセコイ奴なんだな。
一橋って駄目大学だな。 日本が自滅する日 殺された石井 紘基 (著) 全文 目次
第二章 経済むしばむ官企業″― 特殊法人と公益法人など
.第三節 経済のブラックバス″特殊法人の姿 堤理事長
自分のビジネスがどれだけ価値を創造しているか、その価値が世の中の役に立っているか、最も抽象的なところまでビジネスを掘り下げて考えていくしかないでしょうね。偉そうに物を言う経営者もいますが、どれだけ新しく社会的価値を創造し、大きくしたのかが重要です。
中野
価値を大きくすることに意味があるのですね?
堤理事長
たとえば、畑をつぶしてマンションを建てて儲かっても、価値を大きくしたことにはなりません。人間にとっての付加価値を増やさないと意味がないのですよ。
中野
付加価値を高めるときに、最も大事なことは何ですか?
堤理事長
人がそれを使うこと、消費することによって幸せだと思うかどうかです。これにつきます。たとえば麻薬の場合、一瞬愉快になるらしいですが人間の価値は下がりますから、
付加価値にはならず減少価値となります。逆に、赤ちゃんをつくることは新しい命をつくることですから、最も価値のあることです ●堤理事長
大きくしないことはとても重要ですね。本質的には小さいものがたくさんつながっているイメージです。ここで必要なのは発想の転換です。今はこれがとても大事な時代になってきています。
世界的に見てアメリカは自国の成長を維持するため、どこかの国でバブルを起こして、そこで資金を動かさないと自国経済そのものが動かないようになっています。止まってしまったら大変なことになりますから、
ではどこでバブルを起こさせるのがいいのかというと、やはり日本だったわけです。経済も大きいですし、「No」と言わないですから、
世界から見たら日本はターゲットになりやすかったのです。だから、この仕組み的な弱さをどう突破していくのかはこれからの日本にとってとても重要だと思います。
●中野
その中で、全く変わらない軸で存続し続ける会社は強さを発揮できるのではないでしょうか。バブルが来ても踊らされることなく、一直線に進んでいけますから価値が出てくると思います。
●堤理事長
どれだけ大衆の必要性に応えることができるか、あの会社がなければ困るんだと思ってもらえるかでしょうね。
●中野
これに関しては、金融大手はこういった価値の提供はしていませんから、僕の会社は価値があると思います。「長い時間をかけてお金を育てていきましょう」というメッセージを発信しているのはごくわずかの投信会社です。その中の1社がセゾン投信なので、希少価値はありますね。 堤 日本人の身体言語は、多様性を持っていますか? よその国の身体言語とくらべて。あるいは画一性に冒されていますか?
小池:本来、多様性はあると思います。そういう輸入文化の国でしたから。たとえばバレエをやらせても、日本人の単なる身体ではなく、アジア的な別個の身体性があるわけで、
それらをとりいれて、混合していく能力は高いと思うんですよ。音楽でいえば「序破急」的な流れと西洋音楽、それぞれに柔軟に対応できます。ですから可能性はあるんです。
でも、そこから先の問題が大きい。いかにそのポジションからオリジナリティを生み出せるかが問われます。取り入れるまでは良い。
でも、取り入れた段階から少し行ったくらいで満足してしまう。テレビの影響が大きいのだと思いますが、非常に画一的な視覚文化、画一的な音に流されてしまう面が強いと感じます
堤:なるほどねぇ。僕も毎年、ろうあ学校の生徒の作品を、何枚かの絵はがきにして送ってもらうんだけれども、絵画的表現がすごい多様なんです。
これはね、身体的な不自由がかえって、平均化されることを拒否しているんだと思います。人間のからだの表現ひとつとっても、こんな見え方がするものかと毎年思わされていますよ。
やっぱりテレビは画一化に向かっているよなぁ。大衆を組織するというか……だからテレビ時代になればなるほど、本来のあるべき舞台芸術のマーケットとして小さくなっていきますよね。 レーガン大統領には歴史に残る3つの業績があります。第1は冷戦に勝利したこと、第2は観念通貨に対する新しい解釈を明示したこと、そして第3には、知価革命を惰け容赦なく推し進めたことです。
レーガン大統領は、財政が大赤字の中で大減税をします。米国のGDPの2.9%、今の日本に置き換えると14兆円ぐらい減税をするわけです。当然、もの凄い勢いで国債を発行、通貨供給は増えました。その一方で物価上昇を抑えるために、貿易や運輸を自由化、
世界中から安価な物財が流入するようにしました。もっともこれには「冷戦に勝つ」というもう一つの狙いもありました。
レーガン大統領に、私は二度お会いしたことがあります。「財政の赤字などは大した問題ではない。ある日、政治家がガソリン一ガロンに一ドルの税金をかける
決心をすれば解決する程度の問題ですよ。政治家の決断で解決できるのなら、深刻な問題ではない。それに比べて、冷戦や犯罪の問題は、
政治家の決断で明日にはなくなるものではない。だから私はまず、この二つの解決に全力を上げたのだ」と語りました。
私は、その時には随分無責任なことをいう大統領だと思いましたが、結果としてはこれが的中しました。米国が輸入を白由化することで世界の国々を魅きつける。同時に米国が軍備を強化し、ハイテク戦略を推進して、ソ連を軍事的に絶望させる。この戦略が成功したのです。
人類の社会において、経済力で尊敬されるのは消費力であって、生産力ではありません。個人でもそうでしょう。豪華な買い物をし、高級車を乗り回して、
高級レストランでチップをはずめば、みんな丁寧に扱うでしょう。たとえそれが親の遺産か、会社の資産の喰い潰しでも、みな「偉いもんだあ」というに違いありません。
逆に、生産力が高く所得は多くても、木造アパートに住んでインスタントラーメンばかりすすっていたのでは尊敬されません。 多様性を求めるのは決して人間の過ちではなくてこれは満足を得る本質である。だから規格統一の
世界だけでは人間の幸せはやってこないということが言われるようになる。しかもこの多様性を作るの
がコンピュータ技術によってどんどん安くなってくる。この結果、社会主義は目標を失って退廃が起き
るようになりました。目的が達成出来ない。達成出来ない目的を与えられて努力するものは必ず退廃し
ます。そしてその日の自分の利益だけを追求するようになります。これが末期のソビエト官僚の姿です。
それで社会主義の文化というものが滅びました。社会主義は戦争で負けた訳でも経済で崩壊した訳でも
ありません。文化が信じられなくなった。社会主義、共産主義等の掲げる理想というものを人々が信じな
くなったのです。そうなると即滅びます。これは明治維新の時に武士の文化が滅んだ。終戦の時に軍人
文化が滅んだのも全く同様です
堺屋、政治家は運転手に行き先を告げればいいのです。民主党は「政治主導だ」と叫んで運転席に座ってしまったから失敗した。
中田、運転は技術と経験がある官僚や実業家に任せればいいと。
堺屋、そうです。政治には、政局と政策と政見があります。大事なのはやはり政見、つまり政治の哲学、倫理なんですよ。大阪維新が注目されるのは、政見を言い始めたからです 堺屋 経済拡大の方法としては、予算を付ける以外に規制緩和という選択肢もあるのに、官僚がそちらを選ぶことはまずない。例えば厚労省の傘下には社会福祉法人がありますが、
出資金に対する配当ができないから資金が集まらない。これを株式会社化して資金調達可能な形にすれば、
医療や社会福祉に様々な事業者が参入する。待機児童の問題などすぐ解決する。農水省の農業法人しかり、文部科学省の学校法人しかりです。
ところが役人は、あれもダメこれもダメと手足を縛り、それで赤字分は国が補填してやると。これが国家予算を膨らませる仕組みですね。
国の借金を増やしている張本人は、官僚だということです。財務省が財政再建に努力しているなんて、全くの間違いですよ。
かつて帝国陸軍は、敵を減らすどころか、次々に戦線を拡大して敵を増やしていった。その結果、徴兵権を強くし、軍人のポストを増やし、
予算を獲得して組織を拡大していったんです。同様に財務省も、赤字削減どころか実は拡大している。
赤字予算を組んで権限を見せつけ、やがては増税して日本経済を財務官僚の指導下に置く。これが本当の狙いです。
古賀 財務省も民主党も自民党も今の大勢は消費税アップしか言いません。これは大いに問題です。というのは、堺屋さんが言われたように役所には様々な利権があって、何か新しいことをやろうとしても、全く自由に動けない
これからの成長分野としてよく挙げられるのが、農業、医療、再生可能エネルギーの3つですが、本気で農業参入を自由化しようとすれば農協と闘い、農水省の利権を潰さないといけない。
医療では病院を株式会社にしようとすれば医師会と闘い、厚労省の利権を潰さないといけない。再生可能エネルギーも、新規参入自由化のために電力会社や経産省と闘う必要がある。
でも、官僚も団体も徹底的に抵抗しますから、政治家にとって改革は非常な困難を伴う。だから、結局、最も弱い相手に無理を押しつける。それが、国民に対する消費税アップです。「増税を訴えるのが本当に責任ある政治家だ」
などともっともらしいことを言っていますが、逃げているだけじゃないかと思う。成長分野をちゃんと育てることができたら国の収入も増えて増税せずに済むかもしれないのに、頑なにそれをやろうとしない。 金融、証券不祥事の背景は何か。
「日本の企業とクーデター以前のソ連共産党の組織原理に共通点がある。それは競争制
限とノルマ主義だ。ソ連では共産党一党独裁のもとで、いわば日本相撲協会に所属する力
士が優勝を争うように書記長や地区委員のポストを争い、日本では免許を与えられた会社
だけが証券市場を通じて利益獲得競争に奔走した。ともにプレーヤーの数が限られた組織
の中で内部競争させる仕組みだ。参入が制限された組織にいる限り、人間は生活が保障さ
れた。ソ連ではノーメンクラツーラ(特権階級)として一般民衆よりも水準の高い生活を
送ることができたし、日本では政府が決めた高い手数料や、低い預金金利で会社の利益が
確保され、社員は安定収入、管理職、役員は交際費使用権を得られた」
「もう一つの共通点であるノルマ主義は、ノルマを達成すれば特権階級の中で地位が上
がる仕掛けだ。したがってその組織に所属する人間は組織内部での評判だけを気にするよ
うになる。日本のノルマは前年比、他社比、予算比と三つの比較で決める『三比主義』で、
常にこれを上回るようにノルマが課せられる。これは全員が頑張ればハードルがさらに上
がるという”無限地獄”。しかも問題なのは評価の基準が数量なので、ノルマを達成するた
めに質の落ちる取引が増えた。ソ連では生産量を増やすために質の悪い家具や紙を作った
が、日本では企業が暴力団や料亭のおかみと付き合うことになってしまった。これが日本
社会全体の構造的欠陥で、官僚がからんでこうした土俵を作った。」 「1980年ごろまで企業の業績評価は営業利益に基づいていた。そこへアメリカのビ ジネススクールが『何が何でもその時、勝てばいい』という思想を持ち込んだこともあっ
て、80年代の半ばころからは金融収支とか不動産売買による利益を区別しない経常利益 の多寡に業績評価の基準が変わってしまった」
「営業利益と営業外利益の区別がないままノルマを課すから質が低下するのは当然で、 これが今日のバブル経済の原因になった。本来、経営者は『利益はこの程度』『社会的評価
はこれぐらい』といった企業の最終的な理想を公に示さなければならない。しかしその理 念を提示できないまま『三比主義』でノルマを課すからオイルショック以前はシェア競争
に明け暮れ、オイルショック以降は利益額競争に走った」
理念を説くだけでは体質は改まりにくい。現実的にどんな評価基準が考えられるか。
「利益の額でなく、取引の質を業績評価の基準とする『利益質基準』を導入すべきだ。ま
だ研究段階だが、利益質を外延性、継続性、好感度の三つの要素に分け、企
業があらかじめ設定した理念にしたがって三つの要素の加重のかけ方を変える。理念はキ
チンと社員に公表し、はじきだした利益質を人事評価に反映する必要がある。重要なのは
経営者が企業の理念と利益質の尺度を社員や社会に明確にし、理念の実現に強い意思を示
すことだ。そうすれば企業の体質はうんと変わる。それをしないで不祥事のたびに監査制
度を強化するのは最悪だ」
「外延性」・・・同じ取引額でもグループ内での取引は質が低く、外で稼いだ取引は質
が高いと規定する。例えば銀行でA支店の口座をB支店に移し替え、帳簿上、B支店の売
り上げを伸ばすのは外延性が低い。
「継続性」・・・ある利益が来年も再現できる質のものか、一過性の取引かを評価する。新
製品の販売は継続した利益をあげるから、一回限りの不動産売買による利益より質が高い。
「好感度」・・・その利益を得たことが好感を得たか、悪感情をもたらしたかを評価する。
好感度は「取引相手からの好感度」「従業員の好感度」「世間一般の好感度」の三種類がある 「うちの会社だけが突出して『利益質基準』を導入するわけにいかない」という反論が聞こえてきそうだが。
「それは理念がないからA証券会社が五千億円の利益をあげたからと言って、なぜ他
の証券会社までがそれに匹敵する利益をあげなければならないのか。もちろん企業は利益
をあげなければならないけれど、無限に利益だけ拡大するのが企業の理念とは思えない。
現に利益だけ追求してきた企業が今は赤字の危機に立っている例が多い。少なくとも85
年のプラザ合意までには同じような考え方が各業界にあった。薬品業界はすべて武田薬品
を目指していたわけではないし、アパレル業界でも森英恵や三宅一生がワールドやイトキ
ンと利益量競争など意識してはいないだろう」
堺屋 企業は利益追求体だが、質の高い利益を追求すれば、必ず長期的に繁栄すると同時に品格のある企業になる。利益質の第一の尺度は「外延性」だ。
企業の外から上がる利益が重要で、子会社への押し売りなどは駄目だ。
第二に技術開発で新製品を作り、さらに次の技術を生んでいく「継続性」。一度限りのもうけである土地転がしとは違う。第三は、仲間や取引相手、世間から受ける「好感度」だ。
――「利益質」は決算書から読み取れるか。
堺屋 決算書ではわからない。経営者のための利益質決算書をつくろうと提案した。土地の転売など一時的利益なら1点、技術開発なら5点、
新規顧客の開拓なら3点などと加重係数を掛けて利益質ポイントを出す。それで人事評価をしようという提案だ 知価創造的な仕事に従事する人々にとっては24時間が常に情報インプット時間であり、創造的制作時間であり、娯楽と社交の時間でもある。
生活の中の知識と経験と感覚が生産手段の再生産、再投入の一部なのだから、彼らは情報の渦巻く都心に住みたがるのだ。」
「何故に『地位が人をつくる』のか。それには本人の自覚や修練、周囲の補助補完によるところもあるが、何よりも重要なのは地位が情報環境を決定することである。
近代組織においては、組織内の情報は、地位の順に上下に移動する。命令はトップから下位に伝達されるし、
現場の報告や意見具申は下位から順に昇ってトップに上達される。その過程で中間管理職が命令を具体化詳細化するし、報告や具申は取捨選択して要約する。従って、トップは広く浅く知り、下部は狭く深く知る形になる。… ところで、 ここで重要なのは、この組織内の情報流通が、主として対面情報交換によって行われていたことだ。つまり人間同士が顔を見合わせて会議なり指示報告なりを行うことで、大部分の情報が伝達されていたのである。」
「これまでコンピュータなどによる情報伝達は、主として情報量と伝達速度の問題として議論されて来た。情報伝達の変化が量と速度の範囲にとどまるならば、
組織原理を侵すには至らない。しかし、本当に重大な問題は、これが情報の質と経路を変え、
有用な情報技術を根本的に変える点にある。機械網のすべてで情報が抽出できるとなれば、上位者ほど広く、下位者ほど深く情報を知る、という現在の組織原理は通用しなくなってしまうからである。
これまでの組織では、部長は課長よりも広く浅く知っていた。従って、常に上位者には『伝家の宝刀』があった。部長は部下の課長に対して、『きみはそう言うが、全体から見ると君の意見は呑めない』
『君の課ではそうだろうが、よその課のことを考えると、ぼくの判断が正しい』と言えた。相手は部全体の情報を持っていないはずだからである。」 知価創造的な仕事に従事する人々にとっては24時間が常に情報インプット時間であり、創造的制作時間であり、娯楽と社交の時間でもある。生活の中の知識と経験と感覚が生産手段の再生産、再投入の一部なのだから、彼らは情報の渦巻く都心に住みたがるのだ。」
「何故に『地位が人をつくる』のか。それには本人の自覚や修練、周囲の補助補完によるところもあるが、何よりも重要なのは地位が情報環境を決定することである。近代組織においては、組織内の情報は、地位の順に上下に移動する。命令はトップから下位に伝達されるし、
現場の報告や意見具申は下位から順に昇ってトップに上達される。その過程で中間管理職が命令を具体化詳細化するし、報告や具申は取捨選択して要約する。従って、トップは広く浅く知り、下部は狭く深く知る形になる。…ところで、
ここで重要なのは、この組織内の情報流通が、主として対面情報交換によって行われていたことだ。つまり人間同士が顔を見合わせて会議なり指示報告なりを行うことで、大部分の情報が伝達されていたのである。」
「これまでコンピュータなどによる情報伝達は、主として情報量と伝達速度の問題として議論されて来た。情報伝達の変化が量と速度の範囲にとどまるならば、組織原理を侵すには至らない。しかし、本当に重大な問題は、これが情報の質と経路を変え、
有用な情報技術を根本的に変える点にある。機械網のすべてで情報が抽出できるとなれば、上位者ほど広く、下位者ほど深く情報を知る、という現在の組織原理は通用しなくなってしまうからである。
これまでの組織では、部長は課長よりも広く浅く知っていた。従って、常に上位者には『伝家の宝刀』があった。部長は部下の課長に対して、『きみはそう言うが、全体から見ると君の意見は呑めない』
『君の課ではそうだろうが、よその課のことを考えると、ぼくの判断が正しい』と言えた。相手は部全体の情報を持っていないはずだからである。」 情報技術の変化という環境変化があげられる。そもそも非属人的な近代的組織というのはあらかじめポストを用意しておき、
そこに適していると思われる人材を配置するという仕組みである。この仕組みは安定性がある一方、
必ずしも適任とは思えない人材であってもポストを埋めなければならないという難点をも抱えるものである。これは実に恐ろしいことである。
しかし現実問題それほど悪い結果がおこるということはあまりない、むしろ「地位が人を作る」の文字通り最初頼りなくともいずれそれらしくなっていくものである。
なぜなら情報環境を決定するのは地位であり、近代組織においては組織内の情報が地位の順に上下に移動するのからである。
近代組織はこの上下の情報の量と質のバランスによってなりたっているのである。
しかし重要なのはこの組織内の情報流通が、主として対面情報交換によって行われていたということである。つまり人間同士が顔を見合い情報を伝達していたのだ。
それが今直面している変革の波は、その形態まで変化させている。コンピューターの発達により、
コンピューターネットワークがあるところならいつでもどこでも情報を引き出せるようになったのである。
このようにコンピューターネットワークによりすべての情報が抽出できるとなった場合、前述した上下の情報の量と質のバランスが成り立たなくなるのである。
この情報伝達の変化は組織だけでなく、組織に属する個人にとっても深刻な問題である。
なぜなら現在の中高年が積み上げてきた対面情報の有用性が下がり、
中高年には不得手な人が多い機械情報の有用性が高まれば、組織における権威にも影響しかねないからである。
組織における権威は個人の持っている技術・知識・ノウハウによって決定されるべきなのである。 近代組織では「直訴は御法度」、課長がいきなり社長に物いってはいけない。情報は権限と地位の段階を一つ一つ踏んで順番に上がって行くわけです
知価社会では、通信情報によって、全国、全世界を平等に見るように考えなければいけない。ところが、日本だけは対面情報が中心で、
東京のこと意外は考えない習慣が広がっています
機能組織は構成員の能力を最大限に発揮できる役割分担制を採る。これに対して機能組織では、情報と命令のルートは明確でなければならない。
帰属意識の強い人々は、自分の組織の情報を探りたがるので、不正確な噂に惑わされ易いことも注意しなければならない。
同じ組織に所属すれば、共通の目的意識と情報環境に置かれているため、同僚と比較し易い。従って、組織人の嫉妬は、まず組織内部の同僚に向けられる。
組織への帰属意識の強い人々は、組織全体の地位の低下には鈍感で、内部での比較優位だけで満足できる。
市場形成のためにすべき第二のことは、情報の統一です。規格大量生産されるものを、全国民にいいと思わせる必要があったからです 組織を永く維持発展していくために、必要な人間は、人間性が優れている人物よりも、組織力がある人物が望ましい。
組織のトップの役割とは、第一に組織全体のコンセプトを明確にし、その組織の目的を誤りなく伝えることだ。第二に、基本方針の決定と伝達である。第三に、トップは常に事業目的と基本方針の擁護者として、
全体の総合調整に当たらなければならない。これらを行動や言葉、さらにはトップ自身の醸し出す雰囲気で、示さなければならない。
組織を管理する上で、トップの下に、部門長(現場指揮者)、参謀、補佐役が必要である。補佐役とは、隠れている小さな問題点や日常的に発生する庶務雑事を発見し、その解消に努める役である。
部門長には、以下の五つの条件を持った人物が望ましい。まず第一に専門的な知識が深い人物。第二に、適切な判断力を持つ人物。第三に、勤勉さを欠かさない人物。
第四に、人心掌握力を持つ人物。そして、最後に適度の勇気と臆病さを兼ね備えた人物であることである。
参謀は、第一に情報の収集と分析を好み、先見性を養う必要がある。第二に参謀の想像力は常に実現可能性がなければならない。第三に、企画に対する積極性が必要である。
補佐役は、次の三つの条件を満たしていなければならない。第一に、自分の功を顕示しないことへの喜びを感じることができる人物であること。第二に、トップの基本方針の枠を超えないで行動すること。第三に、絶対に、「次期トップ」にならないことである。
部門長、参謀、補佐役とは違うが、組織が常に外的評価と緊張感を持続するために、反面教師的な存在も必要になってくる TPPについてはネット上で下らないデマが流されているようで、けさの記事にも「農業が壊滅してもいいのか」という類のコメントがたくさん来た。
農水省の発表している食料自給率は、2010年度はカロリーベースでは39%、生産額ベースでは69%である。ところが農水省は、前者だけを公式の自給率として発表している。
これによれば畜産品の国産比率は70%だが、その飼料となる穀物の自給率が低いため、これをかけたカロリーベースの自給率は17%になる。卵の96%は国産だが、その自給率はわずか9%だ。
こんな計算に意味がないことは明らかだ。カロリーを取るだけなら、たとえば小麦の輸入が止まったら他の作物を食えばよい。自給率97%の米でもいいし、
大麦でもトウモロコシでもいい。すべての食物の輸入が止まることは、第2次大戦でも起こらなかった。第3次大戦で日本が核攻撃で全滅すれば起こるかもしれないが、そのときは食料自給率どころではないだろう。
「新興国の食料需要が増えて穀物価格が上がったらどうする」という話があるが、川島博之氏もいうように、農業技術の向上によって農産物の生産も拡大している。価格が問題だとすると、
世界の穀物相場よりはるかに高い価格で国内生産する意味はない。以前の記事でも書いたように、自給率を高めるというのは割高な国内穀物を増産することだから、価格高騰の対策にはならないのだ。
浅川芳裕氏もいうように、自給率を高めることだけが目的なら、実現するのは簡単だ。すべての農産物の輸入を禁止すれば100%になる。途上国で自給率が高いのは、
農産物を輸入する金がないからだ。日本も江戸時代には各藩は自給自足だったから、自給率は100%だった。農水省はそういう時代に戻ることをめざしているのだろうか。
食料自給率などという指標はWTOでも認めていないし、各国で算定もしていない。農水省の出している「各国比較」は、
彼らが勝手に計算しているだけだ。ましてカロリーベースなどという数字は、浅川氏によれば「50%を切る数字でないと不安をあおれないが、エネルギーのように4%だとあきらめてしまう」ということで農水省が1983年から発表し始めた日本だけの統計だ。
そもそもこのように補助金や関税で守ることが農業のためにならないことは、補助金漬けの米を見れば明らかだ。 ・オランダは世界第2位の農業輸出国でありながら,穀物の自給率は14%で日本の半分だ。つまりオランダは,足りない食料は世界で
最も競争力のある国から安価なものを,安全・安心さえ担保されていれば,平気で輸入しているわけだ。食料安保は,世界中の国を敵に回さない限り,心配無用なのである。
↑大前研一↑@@@@@↓堺屋太一↓
九三年に冷害で米の生産が激減した時も、外国からの輸入で救われた。食料の国産自給率を
高めなければ食糧供給の安定は保てない、という食糧安保論は間違いである。
国内の農耕を維持していても、天候異変や石油輸入の停止があれば大凶作になる。農業の振興は
グローバル化を前提として、高賃金・土地狭小の日本にふさわしい高級ブランド品の生産を
志向すべきである。現にリンゴのふじやブドウの巨峰は外国に輸出されている。規格大量生産時代の
食料増産思想を捨て、知価ブランドの育成を考えるべきだ。
グローバル化の進んだ今日では、本社の所在地や株主・経営者の国籍は問題ではない。
企業は最良の買い手に売るものである。
TPPに加わらなければならない。しかし、現在の日本には「嫌や嫌や開国」の情報が流されています。
例えば、農水省は食糧自給率というのを持ち出しまが、これはカロリー自給率です。カロリー自給率を出している国は日本と韓国くらいです。他の国は市場価格自給率なのですね。
だから、高級品を作れば自給率が上がるわけです。つまり、日本は食糧増産に邁進した
食糧不足時代の政策をひきずっているのです。これからは日本は高級品を作って農業を輸出産業にしなければなりません。
去年の上海万国博覧会の日本産業館では、日本のブドウやりんごを売りました また、規格大量生産型の産業は、大きな設備投資の償却のため、生産を平準化することで価格が安定します。ところが、電子機器や情報機器などはロットも小さく、
少人数で生産するため、価格の変動幅が非常に大きくなり、
投資の時期でもうかるかどうかに大きく違いが出ます。そのため、先物取引が重要となります。
日本では、あまり先物取引の習慣がありませんが、アメリカやイギリスでは盛んで、
石油は10年先物取引が行われています。現在の経営においては、変動幅が大きくなったときにどうするべきかを考慮し、
早い決断が求められます。そして、常に人に一歩先んじて新製品、新市場を取り入れていくことが重要です
これからの経営では、観察眼のある真摯な気質を持った人が大事になってくるのではないでしょうか。 恋愛と贅沢と資本主義 (講談社学術文庫)ヴェルナー・ゾンバルト (
著者はM・ウェーバーと並び称された経済史家である。ウェーバーが資本主義成立の要因をプロテスタンティズムの禁欲的倫理に求めたのに対し、
著者は贅沢こそそのひとつと結論づけた。贅沢の背景には女性がいて、
贅沢は姦通や蓄妾、売春と深く結びついていたというのである。かくて著者は断ずる。「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」と。(講談社学術文庫) 経済学」は、支配者や指導者のために作られた学問だというのです。言い換えれば、「経済」=「支配者のための仕組み」とも言えるのです。
例えば、「大統領はオバマでいいか・・・」とか、「洞爺湖サミットは成功だったか・・・」とか、まるで自分が政治家にでもなったかのようです。
でもこれは、「やっぱり阪神はピッチャーがいいからなぁ」と同じレベル。とにかく人は、支配者や指導者の視点で話すのが好きなのです
吉本さんが言いたいのは、支配者の視点でモノを見ると、経済に限らず、いろんなところで本当のことが見えなくなるということ。
ものごとを俯瞰して眺め、「ああするべきだ、こうするべきだ」とルールを決めてものを見ることは、
結局、自分を鋳型にはめ込むことになる。「お前、そこからはみ出ているよ」と言い合う息苦しい社会を作るばかりなのです。
その分かりやすい例が戦争です。戦時中、戦争を批判すること自体タブーでした
経済人といわれる人の中にも、吉本さんや親鸞と同じような感覚を持っていると感じる人がいます。それがP.F.ドラッカーです。
経済の“次”に来るものは何なのか――その答えは僕もまだはっきりと見えているわけではありません。ただ現在のような、
金融工学などといった、わけのわからない数字に欲情するだけのようなシステムを生み出す社会は、
もう終わりに近づいていると感じます。“次の時代を担うもの”は意外と目に見えない、普遍的なものなのかもしれない。
「信仰」や「心」、「信念」といったものに僕はその可能性を感じています ――先日出た著書村上『生涯投資家』(文藝春秋)では「日経平均株価4万円台も夢ではない」と書いていました。
安倍晋三政権が掲げるアベノミクスの「第三の矢」である成長戦略でいえば、資金の循環が何より重要です。一挙に政策が変われば、「株価4万円台」になりますよ。
――日銀や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「モノ言う株主」になれ、という提言もしています。
いまや日本の株式市場の実質的な筆頭株主は、国です。公的マネーで多くの企業の株を購入してきたからです。ここまで国が株を持ったのなら、
株主たる国が主導して企業をあるべき姿に変えていかないといけない。日銀および年金(GPIF)は「スーパーアクティビスト」になって、国の資産が増え、国民の税金負担が軽減されるように取り組んでほしい。
日銀は、保有するETFの内訳を公表していませんが、ETFに含まれる株式銘柄の構成比などから、銘柄別保有株数を推計できます。
GPIFの公表分と合わせると、各企業に投入された公的マネーはトヨタ自動車1兆5308億円、三菱UFJフィナンシャルグループ1兆75億円、ソフトバンク・グループ9968億円などと巨額にのぼります。
東証1部上場企業約2000社(3月末時点)のうち自社株を除いて公的マネーが筆頭株主になっている企業は
トヨタや三菱UFJを含め618社。公的マネーが2割前後を占める企業もあります。
公的マネーが株式市場の1割近くを占め、“官製相場”をつくり上げている状況には市場関係者からも批判が上がっています
日銀の総資産が6月末で500兆円を超え、米連邦準備理事会(FRB)を上回った。
国債などの金融資産を大量に購入し続け、何とか2%の物価上昇目標を達成しようと躍起になっている。
対する米国や欧州の物価は上昇し、緩和戦略からの出口を探る。
米欧から離れ、日銀はひとり資産を膨張し続けるのか。 日本経済や日銀の財務への影響を点検する。
日銀の6月末の総資産は502兆円。 国内総生産(GDP)に匹敵する規模だ 土地改革の基本戦略 所有優先から利用優先へ
岩田規久男
東京への一極集中が続き、土地所有者の権益が保護されるかぎり、地価高騰は再び起こる。今こそ土地税制の抜本改革、
計画的な高層化、土地基金の設立などの諸方策をすみやかに実行すべきだ。土地問題は解決できる。
第1章 東京集中をどう排除するか/第2章 東京の地価はなぜ高い/第3章 地価問題の“常識”を疑う/第4章 遠くなってもマイホーム/
第5章 良好な宅地供給のための都市計画/第6章 土地の有効利用をどう進めるか/第7章 農地の宅地化をどう進めるか/
第8章 土地税制の統合と土地基金構想/付録 土地を譲渡した場合の税金の解説 「ストック経済」の時代 豊かさ獲得への処方箋
宮尾尊弘
世界一の資産大国・日本は対外不均衡や資産格差の拡大を是正できるか?経済構造の転換に対応して土地、税制、規制等の問題解決のため、いま何をなすべきかを示す意欲的提言。
第1部 何が問題なのか-パラダイムの転換(世界一のストック大国・日本/ストック経済の背景と構図/数字と実感のギャップ-家計の高貯蓄/数字と実感のギャップ-地価高騰の影響/
金融改革の問題点/地価対策の問題点)/第2部 何をなすべきか-具体的提言
(日本型ストック経済とは何か/株価大暴落の教訓/ストック市場の規制緩和/資産課税の抜本的見直し/不動産の証券化/新しい時代の起業家活動/国際化と日本経済の問題) 直接税改革 間接税導入は本当に必要か
八田達夫
直接税制のゆがみを放置したままの消費税導入は本当に不公平を解決できるか?キャピタルゲイン課税や納税者番号などの利点を生かした独創的な提案で、間接税導入論に代わる改革の戦略を示す。
序章 税制改革はなぜ必要か
第1部 直接税改革の構図(直接税の歪み是正の方法とコスト;直接税の歪みは正す価値がある;有価証券のキャピタルゲイン税の導入;高齢化対策としての直接税改革;土地税制の歪みの是正;税制改革の戦略)
第2部 税制改革の諸問題(アメリカの税制改革;固定資産税はなぜ上げるべきか;税制改革よもやま話;新型間接税は本当に必要か) ところが、知価社会になると価値が変動的です。設備や生産手段、
つまり「財団」の価値も可変的です。「財」よりも、むしろ経営者の能力や技術開発力が重要になってくるわけです。
「サービス化社会」とよくいいますが、サービス分野でも流通や宿泊など規格大量生産した分野は縮小になっている。
そこから先は「時間」と「経験」なんですね。これが非常に成長しているわけです 生まれは大阪城の真南の岡山町(現在の大阪市中央区玉造)。戦中、奈良県に疎開する10歳までを大阪で過ごした。大阪には独特の文化が根付き、町人は揺るぎのない自信と誇りを持っていた。
相撲はお江戸、芝居は上方。私の父母はよく「大阪のこうとは日本一や」と言っていた。「こうと」とは船場言葉で、粋を極めた人の「地味だけど高級」といった意味。そこにプライドがあった。
1970年代以降、東京一極集中が進んだ。当時の通産省(現経済産業省)などが各業界の全国団体の本部を東京に置かせ、大会社の社長は東京に住まざるを得なくなった。
放送のキー局は東京とされ、特定文化施設の建設も東京に限定。このため関西の文化は衰えた。歌舞伎役者、建築家、デザイナーといった文化人が移り住んでいった。
東京一色というのはいかがなものか。国家には2つの焦点が必要だ。私は「楕円構造論」と名付け、文化創造が得意な大阪に情報発信機能を持たせるべきだと訴えてきた。多様性のもとで、発想の自由によって世界は広がる。 本当は建築家になりたかった。きっかけは48年に大阪・天王寺で開催された復興大博覧会だ。
中学1年生だったが、天王寺公園などに造られた会場のバラックの配置に関心を持った。それからやたらと建築物の設計をし、博覧会などの配置図を書くようになった。
東大では最初、建築学科に入学した。東京タワーが建設されると聞いて、3本足のタワーの設計図を書いた。コンピューターがなかった時代で
、構造計算を一生懸命した。ただ、その後に目が悪くなり、書き写し作業ができなくなった。卒業設計は難波の精華小学校跡に造る大劇場構想だ。
通産省入りは友人のドイツ人女性の助言で決めた。住友銀行、近畿日本鉄道と迷っていたら「何が好きかが分かった時、その道に行けるところがよい」と。
万博に関わることになったのは上司の一言から。見合い話を「やりたいことがある」と断ったら「日本で万博をするとかか」と聞かれた。それから世界の万博について調べ始めた。
日本の地方は基本的に城下町文化で、江戸の小型版。大阪が決定的に違うのは、長い間、官僚統制を受けてこなかったことだ。民によって街づくりがなされ、民の文化を醸成してきた。大阪の誇りを取り戻すことは日本にとって有益となる。
関西の瀬戸内の人は水の民で、非常に流動性が高い。昔から「大阪商人、江戸店持ち」が一番いいとされてきた。この「店」の場所が世界に広がり、
ある評論家は(中国の華僑のように)「阪僑」という言葉も作った。流出はするが、定着せずに戻ってもくる。それが大阪人の流動性だ。
70年万博を成功に導いたのは第3次産業革命、規格大量生産の日本を見せるというコンセプトだった。
今、求められているのは「人生の楽しさ」。寿命が延び、余暇時間が増えた。モノより楽しみが大事になっている。民ならではの自由な発想で、自主独立の文化をもう一度生み出したい 大阪府は落選したほうが身のためではないかと私は思う
政府も大阪での万博開催をバックアップして、「1964年の東京五輪から70年の大阪万博」という高度成長期の再来を夢見ている。20年の東京五輪後の景気の落ち込みを少しでもカバーしたいからだ。しかし、大阪の衰退は70年の万博から始まったと私は思っている。
一般的に関西経済衰退の契機と言われるのが64年の新幹線開通だ。東京一極集中が加速して関西、大阪の没落を招いたのだが、大阪万博の頃には新幹線の輸送力はさらに増強され、
山陽新幹線が72年には岡山、75年には博多まで延びた。同時期に航空業界でもジャンボジェット(ボーイング747)が登場して大量輸送時代を迎える。関西、大阪が頭越しにされる条件がどんどん整っていったのだ。
「五輪がダメなら万博を呼ぼう」という愚
70年の大阪万博自体は大いに盛り上がった。来場者数は万博史上最高の6400万人、高速道路網や鉄道路線などの交通インフラも整備されて、経済波及効果は2兆円とも言われた。しかし万博をきっかけに関西経済が活性化したかといえば、そんなことはない。
逆に日本経済が重工業への転換期を迎える中で、国内有数の集積を誇った大阪の繊維業は斜陽化し、商社や銀行をはじめ名だたる大企業が本社を東京に移す動きが相次ぐようになって、大阪の地盤沈下は急速に進行した。
2025年の万博が大阪や関西活性化の起爆剤になると期待する向きもあるが、そんなに甘いものではないことは70年の大阪万博で実証済みだ。「オリンピックがダメなら万博を呼ぼう」では50年前の発想とまったく変わらない。
もはやインフラをつくっただけでレガシーになる高度成長期ではない。万博というと未来技術のお披露目会的な意義が強いが、ネットで何でも見られる時代に万博をやる価値がどれだけあるのか。 マッキンゼーの日本支社長をしていた80年代に大阪を拠点にしていたからよく知っているが、
大阪は「自分の町をつくる」という発想と気合に乏しい。にぎにぎしくイベントを引っ張ってきては、公共工事にありつく。ゼネコンが強いこともあって、どうしてもイベント経済を志向しやすい。
一過性のイベントでは町づくりにはつながらない
万博だけでなく、その後の花博、関西国際空港建設などもその使い方、生かし方が不明なまま公共投資案件として予算獲得のお祭り騒ぎをしたにすぎない。大阪を都市化(アーバニゼーション)が進む世界の中でどのように位置づけていくのか、
という長期ビジョンもまったく不在である。関西の政財界は世界の中で大阪の競争力をどう高めていくのか、世界中から優秀な人材や企業にどのようにしてきてもらうのか、に関しては興味も関心もないのだ。
一過性のイベントでは町づくりにはつながらない。私はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で公共政策論を教えていた。
公共政策論の中心になるのはメガシティである。今、世界で繁栄している場所はすべてメガシティであり、メガシティ以外に繁栄しているところはない。
メガシティの特徴は何かといえば、毎日人がくる、企業がくる、情報がくる、お金がくるということだ。大阪市の人口は約270万人。人口規模では立派なメガシティだが、「毎日人がくる、企業がくる、情報がくる、お金がくる」というメガシティ繁栄の4要件は見事に欠けている。
外資系企業の日本本社といえば東京が一番多いが、それでも香港、シンガポールに比べれば富の流入は圧倒的に少ない。実は外資系企業を呼び込むには4種の神器が要る。
1つは「職住近接」。職場と居住地が近いことだ。外国人のビジネスマンは職住近接を重視する。ハイテク関連を主体とした産業が
集まっている都市を「イノベーションシティ」という。最近は「イノベーション産業の乗数効果」(提唱者はカリフォルニア大学バークレー校の経済学者エンリコ・モレッティ氏)が
言われていて、イノベーション系の仕事で雇用を1つつくると、その地域でサービス関連の新規雇用が5つ生まれるという。この乗数効果は製造業の倍以上だ。 イノベーション産業が集積するイノベーションシティでは、乗数効果で次々と雇用が生まれ、当然、賃金も上がる。ゆえにますます人や企業が集まって繁栄するという好循環になっている。
ちなみに今、世界でもっともイノベーションシティとして様になっているのがシアトルだろう。アマゾンやマイクロソフトを筆頭に数々のイノベーション企業が本拠を置き、
スターバックス、コストコ、ノードストローム、エクスペディアなど多彩な企業もシアトルに本社を構えていて、
すさまじい乗数効果を発揮している。シアトルはコンパクトな町並みに豊かな自然も残っていて、仕事環境と生活環境が両立している。
そうした「職住近接」のライフスタイルも評判を呼んで、世界中からシアトルに人が集まってくるのだ。その北隣のバンクーバーも同じような環境で、
映画、ゲームなどの産業基盤を整えて、今や「北のシリコンバレー」と呼ばれるほど。トランプ大統領の移民排斥思想の恩恵もあって頭脳労働者の集積場所として変貌してきている。
働く場所、飲む場所、住む場所がバラバラだ
外資を呼び込む2つ目の神器は「パートナーの仕事」。パートナーを日本に連れてきても、パートナーにやることがないと長続きしない。言葉も通じない異国にきて家の中で独りじっとしていたら、精神的に参ってくる。仕事でもいいし、
ボランティアなどのコミュニティ活動でもいい。時間を持て余さないことが大事で、
関西では神戸が外国人のコミュニティが多い。神器の3つ目と4つ目は、「子供の学校」と「教会」で、神戸はインターナショナルスクールも教会も充実している。
外資を誘致する4種の神器から見ても、大阪はすべてにおいて足りない。最たるものは「職住近接」で、大阪の経営者というのは昼間は町中で仕事をして、夜は北新地で飲んで、芦屋か夙川か生駒辺りの家に帰る。
町中に住んでいるのは転勤族のビジネスマンと役人くらいのものだ。大阪は世界でも珍しいメガシティで、梅田を中心とした北の商圏は米シカゴに負けない規模なのに、町中には要人が住んでいないのだ。
大阪を職住近接の町にしようと思えば、できないことはない。候補地は2つある。1つは大阪城公園周辺。あの辺りは大阪で唯一緑が多いし、
夜景も素晴らしい。ニューヨークで言えば高級マンションが立ち並ぶセントラルパークに匹敵する素材で、開発ができれば超一流の住宅地になる。 もう1つは御堂筋の両側。船場や道修町といった問屋街は今やすっかり寂れて閑古鳥が鳴いているが、
あそこは大阪を南北に貫くメーンストリートだ。御堂筋に沿って地下鉄が走っているから梅田に出るにも新大阪に行くにも非常に便がいい。東京で言えば千代田区の番町や港区レベルの超一流の住宅街になる可能性を秘めている。
産業構造を変える方法は2つしかない
もともと御堂筋は建物の高さ制限や商業利用などの規制に縛られていて、徐々に緩和されてきた。
御堂筋に事務所物件など人が集まらないのだから、思い切って縛りを取り払って居住用の高層マンションを建てられるようにする。あるいは上階が居住用の複合ビルをつくれるようにすれば、
職住近接の高級住宅街に生まれ変わる。気合を入れて町づくりに取り組めば、大阪はもっと栄える。併せて産業構造を変えてイノベーションシティへの脱皮を目指すべきだ。
産業構造を変える方法は2つしかない。1つは自分たちでつくる。だが、これは時間もコストも根気も要る。伝統的な製造業が幅を利かせる大阪で、新しい産業を興そうという構想はなかなか出にくい。すると方法は1つ。前述のように外から乗数効果の高い企業を呼び込むのだ。
たとえばシアトルに本社を置く企業で、シアトル出身の経営者はマイクロソフトを創業したビル・ゲイツとポール・アレンぐらいしかいない。スターバックスのCEOハワード・シュルツはシアトルが故郷のような顔をしているがニューヨーク・ブルックリンの出身。
アマゾンを創業したジェフ・ベゾスはニューメキシコ州のアルバカーキ出身だが、
今やアマゾンはシアトルの地形を変える勢いで発展している。大型百貨店のノードストロームの創業者はスウェーデンからの移民だ。シアトルはボーイングが本社をシカゴに移した後は、よそ者に街の繁栄をつくり出してもらっている。
大阪がイノベーションシティを目指すなら、やはりよそ者にきてもらうしかない。よそ者が「自分はここで世界に打って出る会社をつくりたい」
「ここに住みたい」と思うような条件を整える必要がある。さらに言えば、よそからきた人たちが繁栄するのを歓迎するような雰囲気を醸成して、法律と条令を整備することが大切だろう。 しかし、私は平成六年、この実態は自由主義市場経済体制を空洞化し、事実上
社会主義体制に移行するほど大規模でかつ質的な変化であると考えた。そして国会で
調査を進め、平成八年四月には『官僚天国・日本破産』(道出版)を著して、国政調査権
による実態調査の中間結果を公表し、わが国は「官営経済体制」であると規定した。
官企業としての特殊法人は巨悪である。巨悪である第一の理由は、特殊法人が
民間経済の上に君臨し、経済の資源を行政の事務(行政の本来の仕事は事務である)に
取りこんで利権の糧とし、国民の借金を増やし、公共(高狂)料金や将来への不安で 国民の生活を圧迫していることだ。
公団、事業団、公庫などの特殊法人が経済の領域から吸収している仕事は、金融、
建設、住宅、運輸、不動産、流通、保険、食品、レジャーの各事業、鉄道、空港、
道路その他の交通・運輸産業、農業・漁業・林業、その他通信、電力などほとんどの
産業分野に及んでいる。
進出していないのは自動車、電機、機械などの製造業ぐらいのものである(これらの
分野では、権力の経済侵蝕がもたらした高コスト構造に悲鳴を上げて、生産地を
海外に移転している)。しかも行政企業は、それぞれ進出した分野で支配的地位を 占めているのだ。
この結果、経済の衣を着た行政機関である特殊法人などはそのファミリーとともに
市場(経済)を狭め、あるべき税収を減らして国家財政と国民経済に致命的打撃を 与えている。 利権システムを財政の面から支えている財政制度は、特別会計と財政投融資計画、そして補助金である。
これを私は「利権財政の御三家」と呼んでいる。政官権力はこの 「御三家」を使って、財政的に特殊法人や認可法人、公益法人を支え、増殖し、天下
り、巨大な権力ビジネスを展開する。これこそ経済・財政を根底から犠牲にする国をあげての利権システムの要である。
財政の第一の枠組みは、表の顔である「一般会計」だ。平成一二年度でいえ
ば、税金と借金(国債発行)を主な財源として八五兆円を集める。それを社会保障や公共事業、教育、防衛などに使う
通常、国の予算というと、この一般会計のことをいい、マスコミもこれしか報道しないが、じつは「特別会計」と呼ばれる裏の予算があり、
こちらのほうが規模ははるかに大きいのである
その特別会計がいま三八もあって、それらの歳入を合計すると三三六・五兆円、歳出を合計すると三一八・七兆円にもなる。
ここに入ってくるのは、揮発油(ガソリン)税のような税金もあれば、厚生年金の保険料もある。
一般会計の四倍もの規模をもつ、この特別会計こそが財政の横綱″なのである。
この国の財政にはもう一つ、他の先進国には見られない 「財政投融資」という大きな枠組みがある。詳しくは第三節で説明するが、
私たちの郵便貯金や簡易生命保険の保険料、年金の積立金を集めて、それを特殊法人に融資したり、国債や地方債を引き受けたりしている
規模の点でも、実質的な意味でも、特別会計こそ第一の予算であり、財政投融資はそれに次ぐ第二の予算、
一般会計は単なるたてまえ予算といっても過言ではないのだ。 ○堺屋参考人 。
既にキャンベラに首都機能がございますが、オーストラリアに駐在した新聞記者あるいは学者が言いますのに、質問をシドニーからしたときの情報の返り方が日本と違って物すごく速い、これはカナダもアメリカもよく言われることですが。
そういう通信情報の社会になっておりますと、通信化できるような、つまり、マシンリーダブルといいますが、機械が読み取れるような文字や数字や図面に情報化する習慣がつきます。
ところが日本は、すぐ御説明に上がりますというので国会へ走ってくる、政党本部へ走ってまいりますものですから、
説明される各お役人の能力に依存して、書面の整理なんというのは膨大なものを抱えてくるようになっておるんですね。こういうこともまずやめる。
それから、今、ドイツのボンに残っておりますような文化財の保護とか、特許料、知的財産権、あるいは国土の保全、そういうようなものに関する記録、
これからのアーカイブズが大変重要な時代になってきますから、これはこれで確実に確保して、そして利用できるような状況にしておく。そして、それが本来の務めだ。
今、本来の務めはみんなもう企画審議の方で、調査統計というのは余り重視しないような雰囲気がありますが、
これはそれぞれに大事な機能として独立させて、その間を通信でやることにしますと、非常に迅速で公平で、そして、いつでも出せるような習慣が生まれてくる。そうしますと、
民間企業も同じように、役所の形の通信情報の技術と慣習を持つようになります。かくして、日本が、どこの地域にいても、
外国にいても日本の情報が正確にとれる国になる、通信情報社会になる。これが二十一世紀にはぜひ必要なことだと思っておるんです。そういうような分け方を考えている次第であります。 文化の中心は東京にあるのであって大阪には何か違うもんしかないと、そう割り切って考えているんじゃないかと思う。
以前は大阪というのは比較的東京に対抗しているところがありましたけど、もう過去の話ですよ。
すべてが東京からの再拡散で、全国がこれだけ平準化されてしまっちゃっている。それをもう一回崩して、以前の地方色豊かな時代に戻そうというのは、あんまり現実性がないと思うんです。
堺屋 いや、あると思いますよ。またそれがなかったら、日本は世界の都市間競争に対抗できないんじゃないでしょうか。
岡田 競争というのは経済的な競争のことですか?
堺屋 文化的、発想的競争です。それがソフトウエアを生んだり、芸術を生んだりして、経済力に転化しますけどね 岡田 でも、三権というのは、僕らとわりと距離がありますよね。
そこらへんでホイホイと生活している人にとっては「政治ってよくわかんねーよ」とか。司法と言っても「離婚するときには家庭裁判所というのがあるのか」とか、せいぜいそのくらいの関係しかないですよね。
堺屋 そう。離婚や交通事故で訴えられたり借金に追われたときぐらいで、たしかに司法は日本人には縁遠い。でも行政は逆に身近で、なにかことが起こると政府はなにやってる、役所の規制がどうだとか言う。
―― 頼りますよね、みんな。
堺屋 頼りすぎなんですよ。だから今は行政だけが強くて立法と司法が空虚なんです。厳密には民主主義じゃなく官僚主導制の国なんですね。面白いことに日本のヒーローには公務員が多い。
とくに江戸以降は水戸黄門、遠山の金さんなど行政府の人ばかりでしょう。公務員でないヒーローというのは、国定忠治だとか藩随院長兵衛などのアウトローしかいないんです。こんな国は世界中にはありません ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています