多数の人が既に指摘していることだが、進路を譲る義務が、一時停止してまで後続を先に行かせる義務だとしたら、公道はおかしい状態になる
車列の最後尾が追いつかれたら譲って順序が交代し、その譲った車両も当然早く先へ行きたいわけなので、また車列の最後尾に追いついて順序が交代し…ということを延々と繰り返さないと義務違反になってしまう
この異常性は法律の解釈に誤りがあることを示唆しているが、特に怪しい点として以下3点が挙げられる

この問題の根本、「進路を譲る=(あらゆる手段で)先に行かせる」という解釈は横井解釈と呼ばれるもの
だがこれは国語辞典的な日本語の意味「道を譲る=先に行かせるために傍へ寄る」とは完全に異なる
法律の解釈において、文の日本語的な意味と異なる解釈は、してはならないため、横井解釈は疑わしい

もし仮に横井解釈が採用されたとしても「できる限り道路の左側端に寄って」という文の解釈が疑わしい
「て」という日本語は「and」という意味ではなく「という方法で」という意味で使われることもある
法律文章では、文に「and」という意味を与える場合、「及び」「並びに」「かつ」という言葉を厳密に使い分けるため、今回のように「て」を用いて「and」の意味を指している可能性は低い
とすれば「左側端に寄れ and 進路を譲れ」ではなく「左側端に寄るという方法で進路を譲れ」という解釈が正しい可能性が高い

また、法律上の「追い付く」は日常の会話で使う「追い付く」とは異なり、「車間距離不保持の距離まで接近する」ことを意味する
最高速度が同じ車両に対する譲る義務の発生条件には「追い付く」だけでなく「引き続き後続の方が速い(後続が減速しない)」も含まれる
車間距離不保持の距離まで接近した上で後続の方が速い状態を維持するのは、当然車間距離不保持になってしまうため、追い越しや追い抜き以外では考えにくい
そのため、譲る義務は、日常会話における追い付く(=追走する)ときに発生するものではなく、事実上追い越しや追い抜きのときにのみ生じる可能性が高い
実際、譲る義務は追い越し時に生じる義務であると解説する資料も存在し、また、『道路交通法とその運用』によれば、そもそも追いつかれた車両の義務は、「追いついた車両を安全に追い越しまたは追い抜きをさせるための前者の義務である」とされている