関東地方の男性(22)は、2010年6月、頭や首筋にできた赤い小さな斑点に気づいた。
だんだん大きくなり目立つようになったため、近くの皮膚科を受診したところ、水虫菌(白癬(はくせん)菌)の一つ、「トンスランス菌」が原因とわかった。
頭や体をぶつけ合う格闘技を通じた感染が多く、男性も、幼稚園から柔道を続けていた。(中島久美子)

■国際試合で外国人から日本人に伝染か

「トンスランス菌」は、水虫菌の中でも、感染力が強い。
皮膚や毛髪が含むたんぱく質を栄養として、主に頭や体部(顔、胴体部分、手足)に寄生する。
皮膚同士の接触で人からうつる。
床に落ちた毛髪やあかから感染することもある。

国内では2000年ごろ、柔道やレスリング、相撲の競技者間での流行が始まった。
国際試合で外国人から日本人にうつったと思われる。

赤い点から始まり、直径1〜2センチほどの環状に広がる。
体部ではかゆみや痛みはほぼないが、皮膚がかさかさになる。
頭部では、かさぶたが生じ、毛髪が抜け落ちる。
まれに、毛根が破壊され、永久に毛が生えなくなる。

菌は、長期間生き残る。
周囲への感染を防ぐためにも、抗真菌薬でしっかり治療する必要がある。

だが、症状は個人差があり、頭部ではほとんど出ないこともある。
軽いと放置してしまい、保菌者として人にうつす可能性がある。

比留間皮膚科耳鼻科医院(埼玉県日高市)副院長の比留間政太郎さんは研究会を作り、格闘技の指導者らに、練習場の掃除や、感染の疑いがある選手の皮膚科受診などを呼びかけてきた。
希望するチームに、頭部の感染を調べる集団検診も行っている。
しかし、「練習や試合を優先し、受診させない指導者もいる」と対策の難しさを指摘する。

冒頭の男性も最初の発症は中学生の頃で、抗真菌薬の服用で治ったのに、高校入学後、再び感染した。
母(56)は、「息子のチームは感染対策をしっかりしていた。 他校との合同練習や試合で感染したのでは。 すべての指導者が対策を徹底してほしい」と話す。