マナー(礼儀作法)とは

人がその社会生活を円滑に営み、社会秩序を保つために用いる規範と実践の総体。
 礼とは温かい真心の具体的な表出であり、礼儀とは他との関係においてそれを判断・評価・行為の基準とする原則である。
礼儀に基づいて社会的に様式化された言語的・非言語的表現が作法である。
これらをあわせた礼儀作法の語は、主として社会の秩序や人間関係を構築し維持する価値基準および行動様式の意味で用いられる。
 礼儀は一般に人間に対してのみ行われるものと思われているが、本来は自己とかかわるすべての事物が対象である。
人が外界の事物とかかわるとき、それらに向かう敬意や愛情が、時、場所、場合に応じて言語的・非言語的に最適化して表出されたものが作法であり、神仏をはじめ道具や水、空気といった無機物など、あらゆるものが対象となりうる。
神社で参道の中央を遠慮して歩く作法は神への敬意を表すためであり、漆塗りの膳(ぜん)にのせた器を持ち上げないまま引きずって移動させることを忌む作法は、膳を傷めないようにする心遣いによるものであって、そのどちらも客体は人でない。
これら作法の根底にある思いやり、真心、誠意といった心情は儒教では仁とされるもので、その発露が一定不変の行動理念としてそれぞれの民族や地域や時代において働くとき、行為は状況に応じて千変万化した作法として出現する。
このように理念としての礼儀は不易の存在であり、実体としての作法は流行の存在といえる。