なにゆえ、父上はあれほど、この身を嫌(きろ)うておられるのであろうか?」
寂しげな顔で呟いた晴信を見て、思わず信方は言葉を詰まらせる。
それから、気を取り直して笑顔で答えた。 「嫌うておられるのではありませぬ。
御屋形様はわざと若に試練を与えてお ...

そやつは、谷町の六郎七のことは嫌(きろ)うておるゆえ、わしにだけ教えてくれたのだ。
――二階におるのか。もしやそのもの、にゃん竜を持ち逃げしたヤクザではあるまいな」
「――知らん。違うと思うで。それより、なんでそんなこと、兄さんが近所にたずねて回る ...