>>79これまでトルメキア兵は軍服を身に着けたまま、
イチモツだけ出した状態で事に及んできたから、
ナウシカにとって、男の裸を目の当たりにするのは初めての事であった。
土を耕す生活とは無縁だった男達は、風の谷に初めてやって来た時、
長旅のせいもあるのか、本当に痩せ衰えた状態だったと後に城オジ達から聞かされた。

それから約一年、健康的な生活を送り、直々の訓練の成果もあり、
未だ谷の男達には及ばないが、それでも見違えるように逞しくなった男達。
男達がこの風の谷で十分自活できるよう、良かれと思ってしたことが、
自分を辱め、痛めつけることとして帰ってこようとは、夢にも思わなかった。
拭き布を身に纏い、浴室の隅にそっと腰を下ろしたナウシカは、
肩を抱くように身を隠して舷窓から外を眺めながら、そんなことを考えていた。

(男達が入浴している間、少しだけ休める)
そう思ってホッと息をついた少女の名が呼ばれる。
一体何事かと思えば、「俺達全員の体を洗え」ときた。
如何にもこの男達が考えそうな事だ。
拭き布を手に歩み寄るナウシカであったが、
続けて男から発せられた思いもよらぬ要求には流石に一瞬固まってしまう。

「お前の体を使って俺達を洗うんだ。
ただし手は使うな。使っていいのは手以外だ。分かったか?」
「…分かりました」
「結構。それじゃあまずは俺からやってもらおうか」
ナウシカの前に歩み出たのは、先程真っ先にナウシカに突き立ててきた男であった。
体を使って人の体を洗うなど、聞いた事もない。
一体どうすればよいというのか。

途惑いつつ、それでもとにかく石鹸で泡を作ると、それを自分の腹に塗り、それからおずおずと男に近づく。
恥ずかしさのあまり、正面から男と相対する気にはとてもなれない。
男の背後に回ると、どうにでもなれという心境で男の体に腹を突き出すようにしてくっつけた。
自分から男に肌に触れるきまり悪さ。