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対ソ開戦(北進論)反対と南進論に関する発言
6月11日の連絡懇談会で枢密院議長・原嘉道や外務大臣・松岡洋右らが、ソ連を討つの好機到来と北進論を陸軍首脳部に訴える中、
永野は「仏印、タイに兵力行使の基地を造ることは必要であるとし南部仏印進駐を強く推し、これを妨害するものは、断乎として打ってよろしい。叩く必要のある場合には叩く」と述べた。

また、7月21日の連絡会議では、新たに外相に就任した豊田貞次郎から「米国は、基幹物資の貿易禁止、日本の資金の凍結、
金の購入禁止、日本船舶の抑留などの政策を実施するだろう」とアメリカが事実上の報復措置を実施すると報告があった。

これに対し、永野は、対ソ開戦については絶対反対とした上で「対米戦においては、現在ならば勝利の可能性がある。しかし、その機会は時間の経過とともに薄れる。
来年の後半には、米国と戦うのは困難になるだろう。そしてその後の情況は、いっそう悪化する。
米国はおそらく、その軍備増強が出来上がるまで引き伸ばし、そして決着をはかってくるだろう

もし我々が戦争抜きで問題の解決が図れるなら、それに越したものはない。
しかし、もし我々が対決が最終的に回避できないと結論するのであれば、時間は我々に味方しないことを心得ておかれたい。
さらに、もし我々がフィリピンを占領したら、海軍の立場で言えば、戦争の展開をその最初から充分に有利とするだろう」と海軍の立場を説明している

一般的に、この時期の永野をはじめとする海軍執行部は、ナチスドイツの要請を受けて陸軍が進めていた対ソ開戦
(「関東軍特殊演習」の記事も参照)を警戒していたともいわれている

南仏印進駐(南進)と米国による石油禁輸
7月30日には昭和天皇に上奏し、海軍としては対米戦争を望んでいないこと、しかし三国同盟(アメリカを仮想敵国とした条約)がある限り、
日米交渉はまとまらず対立関係に入る事、日米交渉がまとまらなければ石油の供給を絶たれること、国内の石油備蓄量は2年、

戦となれば1年半しかもたないことを述べた上で、この上は打って出るしかないと戦争決意について述べた。
しかし、勝算を問われると、自己の見解として「書類には持久戦でも勝算ありと書いてあるが、
日本海海戦のような大勝はもちろん、勝てるかどうかも分かりません」と率直に述べた