高木さんは息を殺して、缶ジュースを求めて男子が話しかけて来るのを待っていました。

そして思惑通り男子が高木さんに向かって話しかけてきます。

高木さんはしめしめと思いました。

いつものように、自分が先に飲んで、意識するように声をかけてやるんだ。

うふふ。

照れて真っ赤になった男子の慌てる姿が頭に浮かび愉快です。

でも、その男子は西片ではありません。

男子は高木さんか口をつけた缶ジュースまで手を伸ばしたとき、高木さんが言うより早く誘っている高木さんの匂わせに気づき、

目にもとまらぬ速さで高木さんに襲いかかってきました。

高木さんはいつも西片をからかっていたように挑発しましたが、

西片よりのろまなはずの男子にすぐに追いつかれてしまい、唇を奪われました。

高木さんも噛みつき返しましたが、 西片より体が小さいはずの男子は平気です。

貞操を奪われた高木さんは薄れ行く意識の中で、本当は男子が女子と喧嘩して勝てるわけがないことと、

いつも西片は高木さんに「してやられた」ふりをして、

わざと高木さんを捕まえないでいたことを、そのとき始めて知ったのです。

西片の大きな優しさと友情に気づいたのです。

そして西片がいなくなった時の胸の奥のチクチクの正体にも気づきました。

かけがえのない友を無くした悲しみでした。

高木さんの魂が体を抜けた時、空の上には優しく微笑み高木さんを待っている西片がいました。

「また勝負ができるね」

「のぞむところさ、今度こそはからかってやるぞ」