「自我」の発達が十分に行われている大人の場合、心的外傷を受けた場合も「何が起こったのか」を現実検討ができる精神的な機能が発達していますので、現実の体験を比較的「ありのまま」に客観視したり、現場で心理的な防衛を機能させることによって対処しやすいのですが、
「自我」の未発達な子どもの場合、事件・事故現場での心理的な防衛が充分でなく衝撃が精神を直撃するため、その影響が深刻になります。子供はできごとの認知方法が主観的であり、特に「感情」や「象徴」を用いて把握する発達段階であるため、
怖かった体験が「悪夢」や様々な身体的な「象徴」として現れたりするのです。これは、大人が「誰かに体験を語る」ことで、「何が生じたのか」を理解しようとするのと同様で、子どもが何とかして「自分に生じたこと」を理解しようと表現しているのです。
このように、大人と子どもでは、同じ体験をしてもPTSDの現れ方は異なりますし、特に子どもの場合は、できごとを認知する能力の発達段階によっても反応の現れ方が異なります。
危機状況において、最大の援助者は家族です。まず、ご家族が子どもの心的外傷に対しての応急処置ができることによって、PTSDの悪化を予防することができます。
そのためには、まず、ご家族が自分の不安に対応することから始めてください。身近な家族や教師が不安を抱えたまま子どもに対応していれば、子どもたちは大人の不安を取りこんでしまうので余計に反応が悪化します。