――監督に決まったと富野さんに報告した時は、どんなことを言われたのでしょうか?

吉沢 はははは(苦笑)。かなり「大丈夫かよ」みたいなことは言われたんですが、でもアドバイスもなんだかんだしてくれて、
背中を押してくれたような気がしますね。
僕、他社さんのお仕事でも絵コンテを描いたら、よく富野さんに見せて「アドバイスお願いします」って聞くんです。
すると富野さんも、他社作品の内容は尊重して、あくまで絵コンテの技術的な部分のアドバイスをくれるのです。
「カメラをこうしたほうがもっと派手になるぞ」とか「キャラクターの上下(かみしも)をもっと意識しろ」とか
「こういうことをしたらもっと盛り上がるぞ」とか、けっこう具体的なアドバイスをくれるので、
『NT』もどう言われるかなと思いつつ、序盤の絵コンテを渡したんです。

そしたら翌日、スタジオにやって来なかったんです。
「あれ? どうしたんだろう」と思ったら、次の日も来なかったんです。
「これ、絶対に切れてるな」と思って、話を聞いたら、まあ案の定、最初の数ページを見て頭にきて、内容が入ってこなかったって。
なぜと言うと、『NT』はコロニー落としのシーンから始まるんですが、「お前たち若い者は、
俺のやったコロニー落としから何も新しいことをやっていない」って。
要するに、……これを言っちゃうと今回の企画を完全に否定しちゃうんですが(苦笑)。

小形 いいですよ、言っていただいて(笑)。

吉沢 富野さんのやってきた宇宙世紀から、何も次の一歩を感じられないって言うんですね。
宇宙世紀の話で、コロニー落としで、言っちゃえば『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の後の話じゃないですか。
「なんで違うことをやっていかないんだ、お前達は」って。
まあ……そこから脚本と、その企画を通した人間に対する罵詈雑言が始まって、僕はどんな顔をしたらいいんだろうって……。