――富野監督は現在、『G-レコ』の劇場版制作に取り組んでいると聞いています。一体どんな映画になるのでしょうか。

 TV版全26話の総集編ですが、過去のダイジェスト版ではなく、TV版まるまる
を使って、劇場版として全5本での公開を予定しています。むろんTV版の構成ミスの部分は削除しますけれど…。

――総集編の劇場版をやる理由というのは?

『G-レコ』は、自分の企画不足もありますが“作劇”になっていませんでしたの
で、ちゃんとした“映画”にしなくてはいけないんです。先ほどから、ただの「SF好き」「メカ好き」が
映画を作ってはいけない、と言ってきましたが、それは僕自身にも言えることなんです。
『G-レコ』は初期の設定がよくて、ガンダムの富野がやるんだから『こんなもんだよね』と思ってしまいました。
つまり、自分ひとりで考えてしまったためにわかりづらい作品になっているんです。

――では、どうやって分かりやすくするのでしょうか。

TV版の演出は、ほぼ丸投げで若い人にやってもらいましたが、僕の打ち合わせ能力が低いんですね。
「作画のチェックはこういう目線でやってほしい」というアニメーターへの指示などを僕がし忘れていたんです。
そのために、当時ちゃんと手を入れられなかった部分など細かい修正が必要です。そういうことをしないと、
映画として気持ちよく見られないんです。説明できる範囲でいいますと、例えば、無重力帯での髪の毛の動きというのは、
重力がある地球とは違うわけです。宇宙にいるのに、髪の毛が全部垂れているのはおかしい。
だからそれを全部浮かせました。そういう絵並びにするかしないかで、手描きアニメの限界が見えると同時に、
それをやっておくと、観客は生理的に抵抗なく見ることができます。そうした修正をかなり入れました。
完成度の高い映画というのは、そうしたことをやっているわけですから。


いま劇場版を5本つくっていますが、1本目がおもしろくなければ2本目は見てくれません。
ちゃんと、ひっかかりのある画面作りをしないと5本なんて見てはもらえないでしょ?
例えば、巨大ロボットが嫌いな人が見ても面白いと思ってもらいたいんです。
映画とか演劇というのは、“ファンにだけ見てもらって“も商売にはならないんです。
それはヒットした『君の名は。』で証明されています。実は、『君の名は。』は画面的な作りでいうと
かなり意識しました。TV版の『G-レコ』では『君の名は。』的な綺麗な絵をつくるということを意識していなかったんです。
ですので、『君の名は。』は見習らわなきゃいけないと思っています(笑)。
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