「何を落ち込んでいるの? 「あばれる」もうギブアップなの。
まだ訓練は始まってないわよ。
身体検査しただけじゃない」
 看守役の若い婦警に罵倒されるわき毛の黒木友香。
「も、申し訳ありません。
今後とも訓練よろしくお願いいたします」
 自分よりはるかに若い婦警に
頭を下げざるを得ない元キャリアの黒木友香。
「でも、エリート警視さんも大変ね。
こんな屈辱的な訓練まで受けて刑務所に
潜入しなければいけないなんて。ああ、悪かった。
もう警視さんじゃなかったのよね。今じゃ
私たち平巡査以下の訓練生だったわね」
「は、はいっ。ご指導のほどよろしくお願いします」
「じやあ、訓練始めるけど。
刑務所内では訓練生どころか、
人間以下の扱いを受けるわよ」
「元キャリアのエリート警視という触れ込みだと、
普通の警察官以上に虐められるのは必定ね」
「それに罪状が殺人で、
しかも殺した相手が犯罪者なると、
他の囚人たちにとっては仲
間の仇ということになるかも」
「生きて刑務所から出てこられるかしら」
「看守のほうでも必要以上に虐めるところを見せて、
囚人たちの同情を買うように仕向けるそうよ」
などと若い婦警たちは好き勝手だ
 実際に刑務所にした黒木友香は、
自分の認識がかなり甘かったことを思い知らされた。
 先に潜入した竹之内優子の報告を元に
さらに過激な訓練を受けたにも関わらず、
友香に対する扱いはもっと過酷なものであった。
 黒木友香は、刑務所の長い
廊下を犬のように四つん這い、
首には大型犬が着けるような太い赤の首を着けられ、
首輪以外は何も身に着けていない全裸で、
鎖に引かれながら延々と歩かされた。
 鎖を引くのは模範囚のひとりで、
後から鞭を打ちながら友香を追い立てるのも
もうひとり模範囚である。
 看守はやや距離を
置いて立ち会うだけである。
「ほら、ほら、グズグズせずに歩けよ」
と、模範囚から罵倒される友香
。模範囚にしては言葉遣いや態度が悪い。
「返事ぐらいしろよ」
と、もうひとり模範囚がすかさず
友香の尻に鞭をいれる。
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つづく