つづき

本気で2人がやり合えば、そこからアングルができると思った。そうでもしないと、業界全体がこっちを向いてくれないから」

UWFの若手レスラーや社員の生活を守るため、新日本に注目を集めるため、前田は過激なプロレスを仕掛けた。
だが、この「顔面蹴撃事件」を重く見たアントニオ猪木は「プロレス道にもとる」と、前田を解雇した。

「現場の人間をも騙すのが、最高のアングルなんだよ。本当に揉めてる、ヤバいっていう緊張感が周囲に伝わって、さらにファンにも伝わっていく。俺にとって最良の師は、猪木さん。

プロレスラーとして言っていいこと、悪いこと、やっていいこと、やらなきゃいけないことというのを、200%、最優秀の弟子として、守っただけ。それ以上でも、それ以下でもない。

猪木さんが、タイガー・ジェット・シンに、自分たちを伊勢丹の前で襲撃させたことがあった。あれは緊張感があったでしょう。俺はそれを目指した。

プロレスってね、自分のアングルに、いかに多くの人を巻き込むかの陣取り合戦なんだ。これをできる人がトップになれる。

俺が自慢できるのは、自分のアングルを人に考えてもらったことは、一度もないこと。自分で考え、自分で仕掛け、緊張感を作ってきた。そのひとつが、長州さんだった」

最後に、長州への贈る言葉を、色紙に書いてもらった。

「いま、一緒に戦ってきたレスラーが、どんどん亡くなってるからね。長州さん、『健康第一』で(笑)」

まえだあきら
1959年1月24日生まれ 大阪府出身 新日本プロレス、UWF、リングスで活躍。
現在は、THE OUTSIDERのプロデューサーを務める