本書は2003年に刊行された、週刊プロレスのライター諸氏によるインタビュー集である。
amazon表示上、代表著者は宍倉清則氏。
以下、拙の評価は、ひとえに氏の担当記事のみを対象としている。

かつてマスメディアは、特権階級であった。
一方的に情報を発信し、読者を扇動する。
それが過剰に独善的・情緒的なものであっても、
読者は抗うことなく、いやむしろ編集者を崇拝する。
プロレスというジャンルには特にそうした傾向が顕著であった。

さて、プロの記者とは言えない、一ファン・素人の文章とは、どのようなものか。
例えばインタビューでありながら自分語りに終始する手法、
相手の心中に切り込みきれない感受性または人生経験の欠如、
自らが有する情報を読者に公開しない勿体ぶり(今は言えない)、
句読点の必然性がない列挙などが挙げられるだろう。
本書の代表著者は、それら全てを、畏怖するまでに発揮している。

レスラーと世間話をする事、日記の如き記事を投稿する事、気に入らない人物を誌上で腐す事、
こうした事で、読者の知識欲ではなく自身のナルシズムを満たす、
同人誌以下の出版物が世に出される時代があったことを、本書は体現している。

時は経ち、今。
拙のように、全ての消費者は批評をオープンにする権利を得た。
特権階級は没落した。
多くの雑誌は休刊を余儀なくされ、
知識や理論で武装が出来ない教養に欠く記者や、
行動する事で情報をつかむことができない記者は淘汰された。
本書の代表著者の淘汰は必然である。
平成の次の年号、代表著者の有償記事が世に出る事はあるまい。
本書の意義は、「時代性の体現」にある。まさに徒花である。