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【シュート】不穏試合を語る Part 94 【セメント】
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0391お前名無しだろ (アウアウエーT Sae2-nBLa)
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2018/10/21(日) 04:41:15.58ID:BGlffk9ua
もがいている岩釣を私は必死に押さえ込んだ。
軽く勝てると考えていたはずの岩釣に焦りの色が見える。
実は私は先のシリーズに来日していた世界の柔道王アントン・ヘーシンクと、
馬場さんの命令で何度かスパーリングを行った。
ヘーシンクは2メートル近い身長で、体重も140キロ以上ある。岩釣よりもはるかにでかい。
裸でのスパーリングでもアマレスの経験があるから体重移動が上手く、
1度上になったらあの巨体だから逃げることは不可能。
東京オリンピックで金メダルを取った有名な「袈裟固め」には、たまらずギブアップした。
ヘーシンクは重かった。そしてやはり強かった。
むろんその時点で岩釣とこういったことになろうとは予想だにしなかったが、馬場さんは考えてたかも。
ヘーシンクの重さに比べれば岩釣の重さなんてたいしたことはない。
みるみる岩釣がスタミナをロスしているのがわかる。私の上腕もカチカチに固くなった。
私は関節は決まらないと判断し、スタミナを奪うことに考えを変えた。
下でもがけばもがく程スタミナは奪われる。この暑さの中私もきつい。だが岩釣はそれ以上だ。
起き上がって体勢を入れ替えようとする力が徐々になくなってきている。
そんな時、「はい5分!」と百田光雄さんの声が聞こえた。
私が立ち上がると岩釣はまだ寝そべったままで荒い息をしている。
弟子の学生がそばに寄って濡れたタオルで顔を拭いてやる。
0392お前名無しだろ (アウアウエーT Sae2-nBLa)
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2018/10/21(日) 04:41:53.02ID:BGlffk9ua
馬場さんもベンチから立ち上がって、
「やっぱり5分じゃ決まらないな。次は10分だな」とロープを揺らして言う。
「よおし!やってやる!」
私は自分でも驚く程気合いの入った声で叫んだ。
岩釣は座ったまま手を振った。
「もういい。もうやめるよ…」
と疲れきった顔で力なく言うと、学生の肩を借りて立ち上がった。
まだ大きく息を弾ませている。私自身もほっとした気分だった。岩釣程じゃなくとも疲れていた。
たった5分の攻防だったが、こういった他流試合は疲れる。
「おい、どうする?」
と馬場さんが岩釣に聞くと
「もう帰ります」と言う。
「まあ待て。今のはほんの若手だったが、今うちでコーチをやっている中堅の外国人レスラーがいるんだよ。
そいつともやってみろ。せっかく来たんだからいい体験になる」
と馬場さんがコシロ・バジリをリングに上げる。
「いや、本当にもういいです」
としんどそうに顔をしかめて馬場さんに頼むが、馬場さんは笑っていながら、
「いいからやってみろ!」と命令口調で言う。
バジリが「カモーン!」と叫んでぶつかっていく。
弟子の学生はすぐさまリング下に降りる。岩釣はまだ回復しないまま仕方なしに組み合う。
そして柔道技でバジリを投げる。ドーンとリング上で音がする。
一瞬周りから「おおーっ!」と声がかかる。
弟子が手を叩こうとした瞬間、下からバジリがあっという間に腕関節を決めた。
「参った!」
と声を上げて岩釣はタップした。岩釣は肩を押さえリング上で転がった。
私との試合でスタミナを使い果たしていた後にすぐにバジリとやるなんて、
もはや抵抗する力は残ってなかったのは明白である。
岩釣は弟子の学生とともに重い足取りで帰って行った。
馬場さんは負けなかった私を誉めるでもなく、親しい記者と談笑しながら山田ジムを後にした。
0393お前名無しだろ (アウアウエーT Sae2-nBLa)
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2018/10/21(日) 04:46:15.84ID:BGlffk9ua
みんな次々といなくなり、鶴田さんと大熊さんと九州の3バカだけが残った。
「ちょっとやり過ぎじゃないですかね。なんか可哀想な気がしました…」
私が先ほどのバジリと岩釣のスパーリングのことに話を向けると鶴田さんが
「渕、それは違うぞ。こういった時は徹底的にやらないといけないんだよ」
と壁の鏡を見て整髪しながら言う。
「徹底的に…」
「そうだよ。あのまま帰ったら『俺は全日本に負けなかった。引き分けた』と言われるからな。
完璧に勝って挑戦してきた奴にウムを言わさないこと。それが大事よ」
と大熊さんが諭すように言う。
鶴田さんが続けて
「いくら若手の渕が相手だろうが、レスラーとやったことには変わりないんだからな。
決着つかないまま帰すわけにはいかないさ。そうだろ?だから別にやり過ぎでも何でもないってこと」
と言った。
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