>>117
警察が関わり、刑法や児童福祉法などの違反が認定された虐待の統計もあります。警察庁の「犯罪白書(2020年版)」によると、虐待に関わる犯罪で検挙された人数は2019年に2024人でした。そのうち、実父や養父・継父などの「父親等」は72%を占めます。一方の「母親等」は29%で、犯罪で検挙された数では父親等が母親等の2.5倍あることになります。

より詳しく見ていくと、加害男性と女性では大きな違いがあります。まず男性の場合、加害者となるのは実父が63%で、養父や継父、母親の内縁の夫などが37%います。検挙された虐待の8割近くが「傷害」および「暴行」ですが、その71%を男性が占めています。また「強制性交」「強制わいせつ」の98%が男性です。強制性交では3分の2、強制わいせつでは6割が実父以外の男性が加害者になっており、女性加害者との大きな違いになっています。

一方、女性の場合は加害者の95%が実母です。女性の方が実の親が加害者になる割合が高いのは、離婚などの際に女性が子どもを引き取ることが圧倒的に多いことが影響していると考えられます。そして「殺人」及び「保護責任者遺棄」に至るケースは男性より女性の方が高く、乳幼児に多い虐待死もここに含まれます。この統計には無理心中や出産直後の事案が含まれているため、経済的理由などから我が子を殺害・遺棄したり、母子で心中したりしてしまったケースが女性の虐待件数を引き上げています。