比例得票率0.6%以上の確保を目指し迎えた衆院選。
結果はれいわ新選組に遠く及ばず、幸福実現党すら下回る惨敗だった。
ポンコツ議員たちのため息、どこからか聞こえる「解党だな」「借金どうすんだよ・・・」の声。
中村、まりの、粟飯原、ゆづか姫ら歴代彼女が無言で帰り始める中、党首立花孝志は独り鳩豆顔で泣いていた。
牧原会社から還流させて手にした金、ホリエモンとコラボした喜び、N信からの称賛、そして何より動画広告収入・・・
それらを今後N国で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「どうすりゃいいんだ・・・」立花は悔し涙を流し続けた。
どれくらい経ったろうか、立花ははっと目覚めた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ。冷たいデスクの感覚が現実に引き戻した。
「やれやれ、帰ってまた言い訳動画撮らなくちゃな」立花は苦笑しながら呟いた。
立ち上がって伸びをした時、立花はふと気付いた。

「あれ・・・?人がいる・・・?」
コールセンタ―から飛び出した立花が目にしたのは、「スポーツ報道センター」の吊り看板の下で忙しそうに働く人々だった。
「今日は政治家がたくさん来るからな」「香西かおりさん入られました〜」
どういうことか分からずに呆然とする立花の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「立花記者、今日もよろしくお願いしま〜す♪」声の方に振り返った立花は目を疑った。
「う・・・有働由美子ちゃん?フリーになったんじゃ・・・」「なんだ花ちゃん、有働はウチの看板女子アナだぞ?」
「し・・・城田登良男エキスプレススポーツ社長?」「立花さ〜ん、かってにスポーツ部長を電通子会社の社長にしちゃダメですよぉ〜」
半分パニックになり、周囲を見回す立花。「大久保建男局長・・・杉山茂センター長・・・あっ」

目の前の扉が開くと、見覚えのあるハゲ頭の老人が入ってきた。
その老人は口をへの字に曲げつつ、無言でカバンを差し出している。
暫時、唖然としていた立花だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった。
「戻れる・・・戻れるんだ!」
老人からカバンを受け取り、22階のアマチュアスポーツ新春懇親会会場へ全力疾走する立花。その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ニセコの山中で冷たくなっている立花が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。