残秋譜
こっちだよと母が呼ぶ声いくまがり縁側わたりあかときの夢
蔵建てて釣瓶シャッコンこがねむしマーラー無為に聴いている午後
自治体バスもついに撤収木守柿無心に熟るる限界集落
たえだえにイングリッシュホルンティムパニがピアニッシモで残夏遠雷
かにかくになつかしきかも鴎外は「ベルリオ」などと苦労していた
牛乳屋はラーメン屋とかはだか屋はレストランとか会津海道
猫いなくなったんだけどネズミも来ないトムとジェリーかふしぎな共生
生霊(いきりょう)というに遭いたし蒼然と暮るるに迅き町裏のいま
そういえば総番号とか来ないねえ日々着信は欠礼挨拶
お姉さまよしてやめてとひきつって居たいと思った幼年のころ
ねこめしも賞味期限はあるんだねシラニャーノカとリズがおこった
アヴェヴェルムコルプスながし商店街さびれさびれてついに極月
皿割って叱る人なし父がいない母がいなくてひとりになった
鴨なんばうどん食べたいさてどこか湯島赤坂内藤新宿?
のっぺらぼうはさみしからずや紀伊国坂ほかにすること無かったのかね
ヴィヴァルディの秋聴きながら秋霖の林間でなく部屋で熱燗
秋陽さしときおりかげりゆわかれしモデル素肌にしばしうつろう
いつからか鐘が鳴ってるどこだろう鳴り続けてる俺には聴こえる