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上の句が下の句の心情を、象徴的に表現している歌です。
まず、下の句に注目しましょう。
「はじめて心」が「ふるえ」た日ですので、愛や恋、そして青春の情熱といった
心をふるわせる爽やかな感動を読み取ることができると思います。

それをふまえて、上の句を見てみましょう。

「ヒヤシンス」が「薄紫に咲く」と言っていますね。
「紫」は、古今集や源氏物語などの古典の歴史によって、恋や情愛・あるいは
禁色を連想させるイメージです。

ヒヤシンスは春に花をつけます。そして、その色が薄紫であることから、
青春のあえかな、そしてほのかな恋のイメージが立ち上がります。

咲き「に」(完了の助動詞)「けり」(過去の助動詞)の組み合わせで、
ほのぼのとした詠嘆の叙情を感じます。

それらをふまえた上で、もう一度、一首を鑑賞してみましょう。
すると、
「ヒヤシンスが薄紫に咲いていたのだなぁ。
 そのころだ、わたくしが初めて心震える恋を感じたのは。
 それはヒヤシンスの薄紫のように、清々しくほのかな恋情であったのだなぁ。」
と言った解釈が妥当でしょう。

古典的イメージを援用しつつ、近代的な恋や青春を詠み上げる、
いかにも近代歌人らしい一首だと思われます。