著者は別の場所でも同種の指摘をしている。「分野横断的に準市場の実態を検討する研究
も現れ始めているが、それらの多くは、市場メカニズムを導入すること自体への原理的批
判を前提にしているため、制度設計の改善提案へと結びつきにくい議論になっていること
が惜しまれる」
バウチャーのような形で
という意味で市場と同じである。しかし、準市場は、少なくとも一つの決定的に重要な点
で通常の市場とは異なる。それは通常の市場のように、利用者はモノやサービスを買うた
めに自分自身の資源を持って準市場にくるのではないということである。そうではなく、
サービスは国家によって支払われるのであり、しかもバウチャーや、使途が特定された予
算や資金提供方式などの形式を通じて、利用者の選択に従って動く資金によって支払われ
る。
準市場の起源は古い。アメリカではバウチャーと呼ばれ、19世紀から教育バウチャーが存
在する。後にフリードマンによって積極的に提起された。バウチャーは公の直営と比べて、
親の選択肢を広げる。競争原理の導入により、学校の健全な多様化が期待できる(268
頁)。
オランダでも学校設立を国が独占していたことへの批判が高まり、カトリックやプロテス
タントの私立学校が設立される中で、私立学校と公立学校に対等な財政支援が与えられる
ようになった。国は学校への資金提供の責任を