今年の司法試験論文刑法…「正当防衛論の基礎」で鮮烈なデビューを飾った橋爪隆先生が大好きなこの論証書けたら、合格しますか?

刑法36条は、急迫不正の侵害という緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに、侵害を排除するための私人による対抗行為を例外的に許容したものである。

したがって、行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合、侵害の急迫性の要件については、侵害を予期していたことから、直ちにこれが失われると解すべきではなく、対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきである。具体的には、事案に応じ、

①行為者と相手方との従前の関係、
②予期された侵害の内容、
③侵害の予期の程度、
④侵害回避の容易性、
⑤侵害場所に出向く必要性、
⑥侵害場所にとどまる相当性、
⑦対抗行為の準備の状況(特に、凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)、
⑧実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同、
⑨行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し、

行為者がその機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときなど、
前記のような刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には、侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。