なぜ目的的行為論は厳格責任説に至るのか、について、
山教授の『故意と違法性の意識』を読んで初めて理解できた。
厳格責任説の基本書を何冊か読んだが、恥ずかしながら、以下の
ようにわかりやすく解説しているものを見たことがなかった。

「人間の行為は、目的に向かって統制されていることを特徴とする。
たとえば殺人行為は、人を殺そうという目的のもとにその実限へと
向かっていくものであって、一定の方向性を有する。(中略)」
「ここでの故意は目的的行為意思として、客観的要素とともに行為の
内容を形成し、構成要件段階に位置づけられる。従って故意は違法
要素である。」
「これに対し、違法性を阻却する事実、たとえば被害者が行為者に対し
急迫不正の侵害を行ってくるというような事実は、行為者の意思方向
とはいわば逆向きに起こる。行為者がこれを統制する立場にない。
そこで、違法性を阻却する事実の認識は目的的行為意思たる故意とは
無関係なものであることになる。ゆえにこれを誤信したとしても故意は
阻却されない(厳格責任説)。」