脱「中国依存」は本当に進むのか
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脱「中国依存」が進まない理由
脱「中国依存」は次の理由から必ずしも合理的とはいえず、期待されるほど進まない可能性がある。サプライチェーンの見直しは、これらの問題を精査したうえで慎重に進める必要がある。

第1は、中国の産業集積は非常に厚く、同国を代替しうる国が見当たらないことである。在中国欧州商工会議所のヨルグ・ブトケ会頭は、5月、中国は産業集積、人材、技術、インフラの面で突出した存在であるとし、分散化のメリットが強調されるなかで、敢えてデメリットが大きいことを強調した。

第2は、市場としての中国の重要性は変わらないことである。国際通貨基金(IMF)の6月の世界経済見通しによれば、2020年は先進国の成長率が軒並みマイナスに転じるなかで、中国は+1.0%の成長を維持する。規模と伸びしろという点で中国は欠かせない市場である。

第3は、感染再拡大により中国の生産機能が損なわれる可能性が低いことである。中国は感染拡大の起点となったものの、感染拡大抑制に最も成功している国といえる。感染症は地震や洪水のように生産設備や輸送インフラの物理的毀損を伴うものではないため、マスクの事例でみたように規模、効率性、機動性といった生産面における中国の強みは今なお失われていない。