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 その他の国々でも、より以前に感染が国内で発生していた可能性があることが明らかになりつつある。米国では、カリフォルニア州で感染の疑いがある複数の死者に病理解剖を実施した結果、最初の公式症例の1月21日より前に感染者がいたことが判明した。

 だが、仏モンペリエ大学(University of Montpellier)の国立科学研究センター(CNRS)のサミュエル・アリゾン(Samuel Alizon)氏は、孤立した症例と「流行の波」の発生源とを区別することが重要だと注意を促した。

■中国起源説

 中国では、武漢(Wuhan)市保健当局が2019年12月8日に最初の症例が確認されたと報告している。

 1月に英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された研究論文によると、武漢市内で確認されたこの最初の患者が発症したのは12月1日だという。

 この時系列は、ウイルスの遺伝子進化の道筋をたどる調査によってほぼ裏付けられている。

 これまでのところ、新型コロナウイルスのサンプル1万5000個以上のゲノム(全遺伝情報)が解析されている。ウイルスの増殖に伴って複数の遺伝子変異が生じるが、ウイルスの毒性を変化させる変異はまだ見つかっていない。

 アリゾン氏によると、遺伝子配列に残る変異は1か月に約2回の頻度で発生するため、研究者らはこの跡をたどることができるという。

「二つのウイルスを比較すれば、何個の変異で隔てられているかを数えることができる」と、アリゾン氏は説明した。このつながりをたどれば「すべての感染ウイルスに共通する祖先」が見つかる。

 英エディンバラ大学(University of Edinburgh)のアンドルー・ランバウト(Andrew Rambaut)氏は一般公開されたゲノム配列データを利用し、「多様性の欠如は、この種のウイルスすべてが比較的最近に出現した共通祖先を持つことを示している」ことを明らかにした。

 この祖先は2019年11月17日頃(誤差範囲は8月27日〜12月29日)に出現した可能性があると、ランバウト氏は推定している。