ニアが月を論破した、と言われるが、
論破までは言っていないのではないか。
後日談で松田と井出がいろいろしゃべったが、
松田はいまだ月よりニアを嫌っており、
井出も「月が勝てば我々が死んでいたので、月が負けて良かった」しか言えていない。
ニアは「人間の自己決定権・尊厳がおびやかされるから」を理由にキラ思想を否定した。

他にも否定材料はあり得るが、どれもクリア可能なもの。
「月が死んだら次代がヤバい」は、跡継ぎ選別方法を工夫すればある程度クリア可能。
「警察など罪のない人が死にすぎる」は、キラ思想の完成形は「キラがアンタッチャブル(触れていけない)」
になった状態だが、その状態だとそれほど罪のない人は死なない。キラに触れさえしなければ勝手に重罪人だけ死ぬ。
「えん罪の可能性があるからダメ」は、月はかなり裏取りしたうえで裁いていたようなので、そこの精度次第。
「個人の独裁になるのがいけない・民主主義的に決めてないからだめ」は、サッダーム・フセイン独裁政権を無理矢理倒したら
余計に実害が多くなった件を見た識者が「社会の状況によっては、民主制より独裁制のほうがうまくいくこともある」と言っている。

ニアのような哲学に最後は頼るしかないが、キラの「犯罪が7割減った」というメリットに対し、
「人間の自己決定権がおびやかされる」というデメリットを対置しただけ。
これでは「論破」というほどではない。対置すれば論破になると考えるのは詰めが甘い。

究極、始皇帝や徳川家康など天下人は独裁制だが、成立してしまえばけっこう戦乱は減りうまくいく。
キラもアメリカ等主要国が公式に支持声明を出し「アンタッチャブル」になれば、実害は激減する。
結局はメリットとデメリットの問題、民主主義的文明観と対抗馬のシーソーにすぎない。難しい問題だ。