何が悲しいのかって

これまで鈴木英雄は判断ミスの連続だった。

一方、中田コロリは人気漫画を連載し続けただけではなく、ZQN討伐でもリーダーを務めたり仲間を救うなど要所要所で活躍。
女とイチャコラという点でも、最終的に若返ったオバちゃんと何人も子供を作る。

まさに「勝ち組」と「負け組」の構図は人類滅亡の状況であっても変わらない、というまさに絶望的で残酷すぎるメッセージが込められてるんだよね(笑)


最後までヒーローになれなかった英雄…


だから早狩比呂美との関係性も、最終的には不和のまま終わる。
「この男は生きている方が勝手に苦しむから生かしておいて」
これは早狩比呂美みたいな世のオンナたちからの復讐のようにも思える

だから実は『I am a hero(アイアムアヒーロー)』というタイトルも、「俺が世界中を救うヒーローですやで!」という強いメッセージ性は皆無。
「a」は英語で「一つ」という意味がある不定冠詞。だから漫画タイトルを正確に解釈するなら、「僕はどこにでもいる一人の英雄(ひでお)」と考えるのが自然だったのかなーと思う。

ただ最終回のオチも完全に一人になったことで、鈴木英雄はようやく「男としての第一歩」を踏み出せる。この降り積もる雪に付けた足跡で終わっているのが、何とも意味深ではないかな。
どこぞの某宇宙飛行士ではないけど、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、鈴木英雄にとっては大きな一歩」だった。

つまり『アイアムアヒーロー』という物語が完結して、そこで初めて鈴木英雄の物語が始まる。もちろん結末が面白かったかどうかはさて置き、少なくとも作者・花沢健吾は最初からこのオチを考えていたんだろうと推察できるね

たとえ世紀末に世界が陥っても、所詮は有能が全てかっさらってく
で、現在進行形で無能なクズは誰にとってのヒーローにもなれないっていう救いがたく根暗で自虐的なアンチテーゼが『アイアムアヒーロー』って作品には込められていたのではないかな

…って考えるとそこまで最終22巻はヒドい結末ではなかったのかも
良くも悪くも、何だかんだで花沢健吾らしいオチだった