洋子は男たちが血を流しながら争って殴り合っているのを観るのが好きだ、
安全なところにいて男たちが自分のために戦う姿を見るのがたまらない。
血が流れるのを観るのが好きだ。ぼろぼろになり、死にそうになって
戦う姿を見ると我を忘れて恍惚となる。一種のサディストなのだ。
 そうやって、おもちゃにされて使われて、飽きたら捨てられる
男が累々。負け犬には興味を失う。惨めさを醸し出しているのを観ると
いらいらして、どこかに消えてよといいたくなる。慈善事業も所詮は
偽善の自己満足、だから最初にジョーたちに引っかかった。お金が
ありすぎて退屈な有閑マダムが、暇つぶしにボランティアだの
チャリティだの、ボクシングだのをやっているのに過ぎない。
ローマの遣唐使を互いに死ぬまで戦わせて興奮して憂さを晴らして
いた観客とかわるところはない。戦って勝つか死ぬか。
そういう生活とは無縁の高見からの見物、傍観者としての娯楽。
それによる廃人の製造と廃棄。それがテーマなのか。