家庭の事情で高校を中退し、働きに出なければならなくなったのは私が16の年だった。
白土作品がシリーズで続々と、小学館文庫から出版されたのは丁度この頃だ。
16才でのバイトは辛かったの一語だけだった。しかし月々の給料から白土作品を心置き無く購入出来る事が出来たのは嬉しかった。
近所の本屋で売ってない秋田書店の白土三平全集は、神田神保町の高岡書店まで買いに出掛けた。この高岡書店は当時では珍しく立ち読み禁止ので、内容を確認する為には気難しい店主のお伺いを立てなければならない何かと面倒な店だった。
こんなマナーに喧しい店にまで16才の少年が漫画を買い込みに行ってたんだから、それこそオタクの元祖だね。