植え込みのツツジが咲き揃うと、国道沿いの歩道は一気に全面ピンク色に染まる。思わずシャッターを押して、切り取っておきたくなるくらいセカイは美しく、一眼レフカメラを構えるには最高の散歩日和だったはずなのだ。

「トド松、ちゃんとクソ松撮って」

 ストーカー兄さんの片棒を担がされてさえいなければ!
 念のため言っとくけど、バカみたいに高かったこの望遠レンズは、決してクッキリハッキリ盗撮するためのものじゃない。ましてや同じ家に住む同じ顔の兄さんを盗撮するためのものじゃないの。そこのとこ分かってんのかな、この人は。

「おい!! 今の角度撮れた!?」
「は? まだレンズカバーも外してないけど」
「早く準備して! それまではおれの目にきっちり焼き付けとくから!!」

 興奮気味に話す闇松兄さん。いやいや闇どこいったの? 誰だよあんた。