思い出話からスタート

 同じく女の子2人の話にすることは決まっていた。だがお友達同士という設定の「ハッピー・タンポポ」と違い、姉妹にした。
当初の登場人物は基本的に姉妹と両親の4人。物語は家庭の中で完結するようにした。

 というのも私たちは子どもの頃から、友達が少ないタイプ。やさぐれた子どもで、遠足や運動会の前の日には「雨ふれー、雨ふれー」と
家で言っていた。学校生活の和気あいあいの集団がどんなものか、いまひとつ分からなかったのだ。

 だから家の中を舞台にする方が描きやすい。家庭は社会の一番小さな集団。題材はおかずや宿題、
年中行事など生活の中にあるささいなことでも、そこに力関係がありドラマがある。あさりよりタタミが強く、
最も権力があるのはお母さんのさんご、気弱な父イワシという家族から物語を膨らませていった。

 ストーリー作りはまず、2人で思い出話をするところから始まる。掲載が5月になるとすれば「母の日」を思い出してあれこれ話す。
エピソードに肉付けして妹の眞理子がネーム(絵コンテ)を作る。できたら姉の眞弓が見てダメなら仕切り直し。
OKになれば妹が下絵を描いて、姉がペンを入れる。最初はけんかすることもしょっちゅうだった。

 もともと少女漫画を描きたかった私たちにとって、ギャグは全く明るくない。読んだこともなかった。絵もうまく描けないし時間がかかる。
姉妹でコタツに向き合って仕事し、仮眠する時はそのまま後ろに倒れ、時間を決めて寝る。
先に起きた方が相手をモノサシでたたいて起こす。あれはつらかった。

 幸い好評で、ほかの学年誌でも連載が始まる。どんどん忙しくなり、けんかしている暇もなくなった。