アシュラは飢餓、人肉食そのものがテーマだから、いつまでも飢え描かれ続ける。
1巻前半の悲壮感は素晴らしい。
とある家族が飢餓によって崩壊していく様子などがリアルに描かれている。
母親が死の間際に、自分の肉を食べるよう子供に言うシーンは強烈だ。
ただその後、アシュラが散所(子供に強制労働させる場所)に入ってからは、物語は急に失速する。
仲間ができるし、アシュラも言葉を話すようになる。
アシュラの父親や母親、マドンナ的存在の女性まで登場し…
なんだか普通のマンガになってしまうのだ。
アシュラのセリフ、
「生まれてこなければよかった」
「なんでこんなめにあったおれが人間らしく生きなきゃならないんだギャア」
という叫びも、平安時代の飢餓にあえいでる子供の言葉とは思えない。
なんか、昭和の子供の泣き言って感じなのだ。
愛に飢えて泣くアシュラを見ても、なんだかあまり同調できない。
死ぬか生きるかの飢えの時に、愛なんて言ってられないだろう…と思ってしまうのだ。
最後は子どもたちだけで旅をするロードムービーになるのだが、
それほど盛り上がらず、母親が死んだところで、プツンと話が終わってしまう。
大人の事情はわからないけれど、打ち切りっぽい感じだ。