仮言命題の論理について説明しておこう。
仮言命題の論理は日常の感覚とずれることもある。
「雨が降らなければ、登山をする」という仮言命題が×(妥当にならない)のは、次の場合のみである。
(1)雨が降らず、登山をしなかった。⇒×
それ以外はすべて〇(妥当になる)となる。
(2)雨が降らず、登山をした。⇒〇
(3)雨が降って、登山をしなかった。⇒〇
(4)雨が降って、登山をした。⇒〇

つまり、後件(登山をする)が真なら命題は妥当になるし、前件(雨が降らない)が偽であっても命題は妥当となる。
記号を使えば、P→Q(PならばQである)は ¬P∨Q(Pでないか又はQであるか)と同値である。

上の例では、そんなに違和感はないと思う。
雨が降ったから登山をしなかったのは当然だし、雨が降った場合に登山をしても別に悪いわけじゃない。

しかし、次のような命題が妥当となると言われたら、どうしても違和感を持ってしまう。

司法試験に鈴木光が不合格なら、ノーベル物理学賞とノーベル化学学を俺はダブル受賞できる。

常識的には何の意味もなさないが、論理上は妥当となる。
鈴木光は司法試験に合格した(¬Pを満たしている)ので、後件は何であっても、明らかな間違いであっても、その命題は妥当となる。

さて、出題した命題だが、丁寧に書けば次のようになる。
最大の正の整数が存在すれば、最大の正の整数は1である。

そして、その命題は妥当とはなるが、そこから得られる結論は、
前件「最大の正の整数が存在する」が偽であるか、後件「最大の正の整数は1である」が真であるかである。
そして、「最大の正の整数が存在する」は偽であるので、「最大の正の整数は1である」ということは言えない。