総大将敗走により敗北───
味方側は総崩れし、歴戦の勇士である主人公も怪我を負い山間部へと落ち延びていた
全身に多数の裂傷、特に露となっている脚は顕著であり
素早く戦場を駆けていた流麗な走りとは程遠く、脚を引きずり歯を食いしばりそれでも安全な場所へ落ち延びようと必死で駆けずり回っていた。
時間は夕刻。この山には野犬や熊などの猛獣や山賊が出るし、さらには大規模な追討戦も行われている
数々の見えない敵や味方の安否、自身の怪我……自ずと不安が彼女を支配し始める
(一刻も早く山を越えないと……)
その矢先、草木から物音が聞こえ

「しまっ……!?」

ドッ

不意を突かれた彼女の漏れ出た声と鈍い音は同時に響いた。
農民の竹槍による突き
普段であれば当たるはずのない素人の攻撃、しかし数々の要素が重なれば

「いやあああああああっ!!」

絶命に至る一撃となる
背中に深く突き刺さる槍は激痛を生み
たまらず主人公は悲鳴と共に背中を庇うよう背面へ仰け反る
「嫌」と叫んだのも様々な感情を孕んでいた
味方の安否
自分の命が散る事
志半ばで果てる
落ち武者狩りに討たれた末路
様々な想いが止めの一撃をきっかけに溢れ出る

そのままうつ伏せで倒れると、大金星をあげた農民は喜び勇み彼女へ鈍い突きを浴びせ続けた
素人である彼には命を絶つ一発を放つことも、討ち取った将をどう処理すればよかったのか
興奮状態な事もありとてもわかりそうには無かった

主人公の華奢で可憐な身体は蹂躪され
「ああああああああああっ!
!!!!」
腕を伸ばしながら助けを求めるように泣き叫ぶ
歴戦の勇士の悲鳴が響き渡った
彼女が最後に見たのは自身の身体を弄る農民の姿
断末魔と共に殆ど抜けた魂は
一粒の真珠ほどの涙から、完全に尽きてしまった

主人公討死
落ち武者狩りに襲われる