今日も今日とて兄妹と保護者っぽい二人で冒険していたわけよ。
……じゃなかった。今日は冒険していない。

なぜかって言うと、兄さんが寝込んでいるわけ。
いや食中りじゃなくって、どうも風邪らしい。
「こんな冬山で乾布摩擦なんてするからよ…」
泊まってる宿の主人らしいレンが何気に毒を吐く。
「いや、してないから。いらない刷り込みしなくていいから」
嘘なのかよ。妹さんちょっとがっかり。

そもそも、なんで風邪ひいたかというと、これまた色々あったわけよ。

「兄さん、すごい! 一面真っ白な雪! 綺麗!」
国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった。
いや当たり前なんだけど。つーかここ何国?

「ネバンと違ってあんまり人が来ないから、積もり放題だな」
フレイムヴェイルをかけて雪を溶かしながら進む一行。
「しかし、届けものって、いったい何だろう」
兄さんが小坊主から預かった荷物を揺らす。
「案外、ラブレターかもよ」
「まあ、気にはなっているみたいだったな、あの様子からすると」
「遠く離れた恋……なかなか逢えないなんて可哀想」
「まあ、君はもうちょっと離れることを知ったほうがいい」
「じゃあちょっと実験しましょ(ニヤリ)」

というわけでなぜか雪国かくれんぼよ。鬼は兄さん。
「日暮れまで離れていられたら、一緒の部屋で寝ていいから」
と無責任な約束を騎士姐さんがしたもんで、妹さん大張りきりよ。

……で、結局。兄さん日暮れどころか夜中までさまよってたわけよ。
そりゃあ風邪もひくはずさね。

「兄さん、調子はどうですか?」
「結構ましになった」
「はい、おかゆです。カリユではなくおかゆです」
「ああ、ありがとう」
「早く治して、一緒に寝ましょうね」
「アレ有効なのかよ、ってかなんか微妙に改変されてないか?」

「ふふふ、仲がいいのね」
まさか見つめるレンがあんなことになろうとは、誰も思っていなかったのだった。