ピアニストが頼まれても絶対に弾きたくない「魔王」「主題と変奏」が揃い踏みで登場。
今夜は筋肉をいたわって十分に休養を取りましょう。そんなわけで今回も予習がてらに解説を。

まずは「主題と変奏」から。
正式な曲名は「パガニーニの主題による超絶技巧練習曲(大練習曲)第6番」。作曲経緯についてはラ・カンパネラと同様「俺はピアノのパ(以下略)」の件を参照。
これの原曲はパガニーニ作曲「24の奇想曲 24番:クワジ・プレスト」であり、ヴァイオリン演奏においても最高難度を誇ります。
まずは石川綾子による演奏、特に後半部分をお聞きください。
https://www.youtube.com/watch?v=7axMQQJyHco
この技巧偏重とでもいうべき超絶テクニックに触発され、リストは「俺はピ(以下略)」と叫び、のちの超絶技巧練習曲につながります。

この曲がリストによって魔改造された結果、世にもおぞましい「主題と変奏」が生み出されるのですが……
こちらが超絶技巧版の楽譜とニコライ・ペトロフによる演奏です(貴重な音源!)。
*閲覧には絶望を伴う場合があります。
https://www.youtube.com/watch?v=Cf_Zhaj7lg0
最初の一音目から左手10度、右手11度の和音。最早努力や根性ではどうにもなりません。
進行に従って増える複雑怪奇な不協和音と、何部音符なのかすらわからない細かい音の洪水。
原題のtrancendence、つまり「超越」は文字通り人間卒業クラスということ。
「悪魔に魂を売ったヴァイオリニスト」と「ピアノの魔術師」を一度に相手にする絶望を覚悟しましょう。