「You know "High Noon"」。
大統領はきょとんとするわけですが、総理がかまわず「You know Gary Cooper」と続けたら、
大統領はあのホワイトハウスのローズルームのガラスが震えるような大きな声で「ウワーツ!」と言って、
いきなり総理の手を握って、あとはすべてOKだったというんです。
その一発だったんだというんです。
だから、もうすべてジャパンOKだと言って、国務省もOKと言って、もう全部OKしたんだそうです。

「You know "High Noon"」、その一発で決まったわけですが、
『真昼の決闘』は、われわれの世代の方がだいたい見た映画です。
ゲーリー・クーパー演ずる保安官が悪漢を逮捕した。
その悪漢どもを刑務所にぶち込んでおいたんだけれども、やつらが出てきてお礼参りに来る。
すでに時はたち、ゲーリー・クーパーももうだいぶ年をとっているわけです。
年をとっているけれども、お礼参りに来るという噂に対して彼は町の人が助けてくれると思ったら、誰も助けてくれない。
それで西部の町の真ん中をとぼとぼと1人で出かけていく時に、Do not forsake me, oh my darling という歌がかかるわけです。
それがアメリカだと、ブッシュ大統領はそう思ったのでしょう。

クリントン前大統領はこの映画を26回見たと言います。
ですから、ヤンキーとかデキシーとかいうアメリカ人にとっては、やはり非常に印象的な映画だと思うんですが、
ブッシュ大統領も3回見たそうです。小泉総理は、「俺は2回しか見てない」と言ってました。
普通は1回ですねと言ったんだけれども、クリントン前大統領はこの間日本に来た時は26回見たというほど、
やはりアメリカの大統領というのは超孤独なのでしょう。
その頂点に立っている者にとっては非常に大きな印象だったんだと思いますが、
アーミテージ副長官によると、
「それから後はもうまったく問題ない、
国務省にとってこんな楽な話はない、
俺は本当に運のいい時に副長官になった」
といって笑っていました。
それくらい今、波長が合っているんだと思います。