たとえば、冷蔵庫の中に甘くて美味しそうなお菓子が入っているとします。最初のうちは、それを食べるのを我慢するのは困難で、つい食べてしまったり、たとえ我慢することができたとしても、「食べたい」という思いと「食べてはいけない」という思いとの葛藤を経て、ようやく食べるのを我慢するという流れになりますね。

——そうです。とても「喜びを感じる」どころではありません。

それは、まだ「抑制」の段階にあるからです。それに対して、「節制」を身につけた人は、それを食べるのは自分の健康にとってよくないことだと判断したら、自ら進んで食べないという選択をする。すると「今日も健康な食生活を送ることができたな」という喜びを感じることができます。

つまり「節制」という徳を身につけることは、何かをイヤイヤ我慢することではなくて、むしろ自分が本当に望んでいるものを見つけ、本当に満足するあり方へと自分を導いていくことなのです。